下の写真を比べてみてください。左側は開腹手術(お腹を切る手術)で右側は腹腔鏡下手術(お腹に穴をあけて行う手術)です。視線に注目すると左側は、手術している場所を見ていますが、右側は、画面を見ています。このように、手術は、低侵襲手術といわれるお腹に穴をあけて行う手術が主流になりつつあります。
出所:看護rooホームページより
https://www.kango-roo.com/sn/k/view/3582
私は、医療機器メーカーでの経験があるため、ものづくり企業が医療機器業界に参入するお手伝いをしていきたいと思っています。ものづくり企業の医療機器業界参入は、臨床現場を良く知らない企業が自分の技術でどこに参入のニーズがあるのかがわからない、ニーズを聞きだせたとしても、その情報だけで製品を作ってしまうと、まず、医師は使ってくれないという現状があります。写真の例でもわかるように、「よく切れるメス」や「無影灯」は、今から作っても、売れそうにありません。右の写真のように変化していくのであれば、お腹に入れた時に安全に簡単に動かせる構造の鉗子や、滅菌しやすい、安価な素材の鉗子などにニーズがありそうです。また、液晶テレビを監視しながらの手術になりますので、解像度などにもニーズがありそうです。このように、治療の進歩にも注意してみていく必要があります。
治療の進歩に加えて、治療の流れも着目して欲しいところです。例えば、人工透析は、治療中だけでなく、治療前の準備、治療、治療後の後片付けまでを考慮した開発が必要です。例えば、血液を通すダイアライザ(透析器)は、治療前に微細な塵、膜の保護剤、充填液や空気を除去し、透析が開始できるように回路内とダイアライザ(透析器)を生理食塩水などで満たしておく必要があります。この時に洗浄しにくい、または、回路と接続しにくいなどの問題があれば、どんなに効果的な治療ができるものであっても、安全性の面から使用されないものになってしまいます。また、治療後は、血液が触れるものなので、きちんとした処理がなされる必要があります。このように、治療前後を考慮した開発を行わないと、結局使えないものを時間と資金をかけて作ってしまうことになりかねません。
部材や部品供給だけだからと、最終製品がどのように使用されるかを知らないで作ってしまうと、せっかくの開発のチャンスを逃してしまうことにもなります。許認可ももちろんですが、それ以外の、例えばどのような治療に使用されるものなのか、準備から治療中、治療後の処理の仕方はどうなのか、その治療のトレンドはどうなのかなどもぜひ学んでほしいと思います。もちろん、自分たちだけでは対応できないものは、私たち専門家が支援しますので、ぜひご依頼して頂きたいと思います。