小規模事業者持続化補助金と地域支援
城西支部 尾形 博
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者を対象とする補助金として広く利用されています。先般、中小企業庁より2022年度の補助金の概要が公表され、小規模事業者持続化補助金もリニューアルされることがわかりました。過去2年は、一般枠に加えコロナ関連枠が設定されていましたが、今回は、「成長・分配強化枠」「新陳代謝枠」「インボイス枠」が新たに設定され大きく変わるようです。詳細は発表されていませんが、小規模事業者版「事業再構築補助金」や「事業承継・引継ぎ補助金」的な位置づけにも思えます。今回は、この内容を中心にお知らせしたいと思います。
1.通常枠:50万円
従来通りの設定で、恐らく内容に変化はないと思います。
2.成長・分配強化枠:200万円
これは、業況が厳しい中で賃上げ等に取り組む小規模事業者向けに特別枠を設け、補助率や上限額を引上げるもので、この補助金としては異例の上限が200万円となっています。条件としては、最低賃金より30円以上の賃上げ実施となります。
3.新陳代謝枠:200万円
後継ぎ候補者が実施する新たな取組や創業を支援する特別枠を設け、上限額を引上げるもので、「成長・分配強化枠」と同様に上限が200万円となっています。これは、事業承継・引継ぎ補助金の小規模事業者版といえるかもしれません。
4.インボイス枠:100万円
インボイス発行事業者に転換する場合の環境変化への対応を支援する特別枠を設け、上限額を引上げるもので、上限は100万円となっています。これは、インボイス制度の2023年10月からの導入を前に実施するものです。小規模事業者に多い免税事業者は、インボイスを発行しない免税事業者のままでいると、取引先が消費税の税額控除ができなくなるため取引の機会が減少してしまう恐れがあります。そのため、多くの小規模事業者が消費税のインボイスを発行する課税事業者への転換を迫られることとなるため、ソフトウェアの導入等の費用を補助するものと思われます。
以上のとおり、通常枠以外は100万円、200万円と持続化補助金としては、大きな金額となる見込みです。
持続化補助金の実務について
持続化補助金は、他の大型補助金に比べて金額は小さいですが、税金を投入するものなので経営計画の審査や、採択後の検査は厳密に行われます。しかし、公募要領等の内容をしっかり理解していない申請者も多く、首尾よく採択されても実際に支出後の実績報告で苦労している事業者も多くあります。最悪の場合せっかく採択されたのに事務手続きの不備で補助金がもらえない事態も発生しているようです。しっかり、手続きを理解していない事業者が悪いといえばそれまでですが、一定のサポート体制があればもっとスムーズに事が運ぶような気もします。
持続化補助金の支援について
これまで、中小企業診断士の持続化補助金支援は、商工会議所等での相談業務が中心だったと思います。補助金の金額が小さいため報酬も多く見込めないことが理由の一つかもしれません。地域の小規模事業者の活性化は、中小企業診断士としての重要な業務です。2022年の持続化補助金は、制度が大きく変わりチャレンジする小規模事業者の助けになることと思います。ぜひ、この機会に持続化補助金を通じた地域の小規模事業者の支援に取り組んでいただければと思います。
【中小企業庁 令和3年度補正予算チラシより抜粋】