フランスのワイン消費動向と日本との関係
城西支部 国際部
浦 美和子
最近「フランスでワイン離れが止まらない」というWeb記事が目に留まりました。以前、フランス旅行をした際には、お水やコーラよりもワインのほうが安いと感激し、ランチから飲んでいたくらいなので、フランス人は皆デイリーにワインを口にしているものと思っていました。
しかし、フランスの一人あたりのワイン消費量は、1926年をピークに年々減少し、2020年には1/3まで減りました。2020年は新型コロナによるロックダウン等の影響が考えられますが、2000年の時点でピーク時の1/2になっています。
ワインの消費量が減っている理由の1つめは、「若者のアルコール離れ」と言われています。日本でも同じような現象が起きており、健康志向重視でワインだけでなく、アルコール自体の消費量が減っています。近年は、ノンアルコール飲料の品揃えが充実してきたことも背景にあります。また、SNSの発達やテレワークの進展により、飲みニケーションといったお酒を通した場が減っていることも影響していると考えられます。
理由の2つめは、アルコール飲料が多様化し、ワインに代替していることです。ビールやカクテル、他国の酒類などがフランスにもどんどん入り、選択肢が増えました。エスニック料理や和食など、多国籍の料理を楽しむようになったことも、ワイン以外を食事に合わせる機会の増加につながっています。実際、フランスでは日本料理店が年々増加しています。特に、焼き鳥、寿司、ラーメンが人気あるようです。
和食の人気の高まりに伴って、日本酒も飲まれています。国税庁の調査結果、「最近の日本産酒類の輸出動向について」によると、2021年の日本の清酒の世界への輸出において、フランスは第10位でした。日本の世界に向けた清酒の輸出は12年連続で過去最高を更新。10年前の2010年比較で2倍にもなりました。輸出単価も上昇しています。
また、意外なことに日本の輸出酒類の中では、日本酒よりもウィスキーが輸出金額一番です。フランスは、中国、アメリカに続いて、ウィスキー輸出先の第3位となっています。さらに私が驚いたのは、日本からのワイン輸出先の第10位にワイン王国フランスが入っていることです。フランスで日本ワインが認められているという証です。
日本酒や日本ワインを海外に広めるために、JETROもその後押しをしています。日本産の農林水産物・食品のブランディングのためにオールジャパンでの消費者向けプロモーションを担う新たな組織として、2017年4月1日、JETRO内に日本食品海外プロモーションセンター(JFOODO)が創設されました。JFOODOでは、戦略なプロモーションを通して「日本産」の価値を向上させるとともに、ブランド力を高めて輸出拡大に貢献すべく、マーケティング戦略の策定をしています。
例えば、日本酒の場合には、日本酒は特定の食材・料理・飲食シーンとの結びつきが弱いため、「〇〇〇といえば日本酒」という連想関係をつくることが、消費拡大には必要です。日本酒は魚介の生臭さを包み隠し、うま味を増幅させる、という科学的根拠を強みに、「魚介類に最も合うアルコール飲料は日本酒である」というポジションの確立を目指します。
日本ワインについては、日本固有種である甲州、マスカット・ベーリーAの2品種について、欧米品種にはない特徴に裏付けされた食事との相性の良さを、ワイン業界関係者、外食店舗、消費者に向けて訴求します。それぞれターゲット国を定めて、効果的なプロモーションを仕掛けています。
新型コロナによりインバウンドが大きく消失した今、日本ブランドの輸出強化に期待が寄せられます。私自身日本ワインと日本酒が好きなため、さらなる発展に寄与できる活動がなにかできたらうれしいと思っています。
【参考資料】
・President Online:「ワイン離れが止まらない」フランス人がワインの代わりに飲み始めたもの
・国税庁:「最近の日本酒類の輸出動向について」
・FRACE365:「フランスで“若者のワイン離れ”…その背景は?」
・JFOODO公式HP