副業・兼業、ワ―ケーション、そしてリトリートな生活とは

城西支部 一般社団法人城西コンサルタントグループ
滝沢 悟

 人生100年時代を迎え、2021年4月に改正高年齢雇用安定法が施行され、企業には定年延長や定年廃止など高齢者の就業確保に向けた取り組みが一層求められるようになってきました。一方、働き方改革の面からも、若いうちから、自ら希望する働き方を選べる環境を作っていくことが必要となってきており、コロナ禍におけるリモートワークの推進などと相まって、副業・兼業などの多様な働き方への関心や期待が高まってきています。特に、現在、企業に所属して本業である業務を持ちつつ企業内診断士の立場にある方にとっては、副業・兼業については非常に関心があるテーマの一つではないかと思います。

 副業・兼業は、働き手の自身の能力をひとつの企業に捉われずに幅広く発揮したい、本業以外の仕事を通じてスキルアップを図りたいといった働き手の多様なニーズに応えることができること、他方、企業にとっては優秀な人材の確保や、社内では得難い知見を活かしたイノベーションの創出が見込まれる取り組みとして注目が集まってきています。
 経団連の調査レポート(2021年10月)によれば、「働きがい」と「働きやすさ」の双方で実感できる職場づくり(エンゲージメント)を推進する上で、働き手の多様な価値観を尊重し、自立的なキャリア形成に資する施策として副業・兼業が取り上げられています。

図表1 エンゲージメント向上のための施策

図表2 副業・兼業に関する「働き手の視点」と「会社の視点」

図表3 副業・兼業を認めている業種別割合の調査結果(経団連)

 

 このように、副業・兼業は、新たな技術の開発、オープンイノベーション、企業の手段や第2の人生の準備として有効とされていますが、一方では、副業・兼業の普及が長時間労働を招いては本末転倒であるとの見解も示されています。従って、副業・兼業を行うことで、長時間労働となり労働者の健康が阻害されないように、過重労働を防止することや健康確保を図ることも認識して推進する必要があります。上記の経団連の調査結果にもあるように、副業・兼業を認めている企業の割合は業界によって区々となっていますので、留意が必要です。このための副業・兼業に関するルールについては、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が厚生労働省から示されていますので、こちらを十分確認のうえ、取り組むようにすればよろしいと思います。

 新型コロナ感染拡大というコロナ禍において、多くのビジネスパーソンはテレワークやリモートワークといったこれまであまり実施することのない「働き方や生活スタイル」をいやおうなしに経験することになりました。コロナ禍が終焉した後(終焉するかどうかまだ不明)で、コロナ禍以前の元のビジネススタイルあるいは生活スタイルに完全に戻ることは想定しにくいと考えられます。
 アフターコロナ時代においては、ニューノーマルである「働き方や生活スタイルの変化」を受けて、ワ―ケーション『ワーク(仕事)+バケーション(休暇)』や越境学習『新しい価値観や多様な物の見方を育成』への関心が高まってきています。テレワークや越境学習、ワ―ケーション等の働き方の変革は、リトリート(注)な生活環境との共生を推進して、移住や地域とのふれあいを重視することにつながり、ニューツーリズム等による地域コミュニティ活動の活性化の機会増も考えられます。更には自給自足、半農半X(農業をしながらほかの仕事を行うスタイル)等という考え方が受け入れ易い環境になり、リトリートな環境でリトリートな生活を希望する人々が増えると予想されます。仕事と田舎暮らし等の両立で「働きがい」と「働きやすさ」を享受しながら、地域の活性化にも貢献できる『リトリートな生活』へチェンジも今後は視野に入れてみたらどうでしょうか。

(参考) リトリートな自然環境(南アルプスを望む)での生活空間

(注)リトリート:
 リトリート(retreat)とは、日常の忙しい暮らしから離れ、自然の力や心地よさを感じながら、自分自身に向き合い、心を整えリラックスし、心身の疲れを癒し本来の自分に戻っていく意味合いで使われている。リトリートには、ヨガや断食など様々な形があり、自然豊かな場所で過ごすことによって地域の自然や人とのふれあいで心と身体の健康づくりに役立てることができるため、リトリートによる癒しの時間や体験を求める人たちが増えている。

なお、副業・兼業について、もっと詳しく知りたい方は以下の文献を参考にしてください。
・「副業・兼業の促進に関するガイドライン(わかりやすい解説)」厚生労働省(2020.11月)
・「副業・兼業の促進-働き方改革フェーズⅡとエンゲージメント向上を目指して」経団連(2021.10月)