日本に帰化する外国人の現状
この記事を執筆している今は、まさにラグビーワールドカップの真っただ中、日本がアイルランドに勝ったという偉業を成し遂げた直後です。これまでラグビーとは無縁で、2015年のワールドカップの南アフリカ戦勝利は当時のニュースで知っているものの、その凄さを知りませんでした。
今回は直前に放映していたドラマ「ノーサイドゲーム」を見て、ラグビーを少しわかるようになったことをきっかけに、日本戦初戦のロシア戦をテレビで観戦したところ、ラグビーのおもしろさが理解できました。テレビ放映では、初心者でもルールがわかるように丁寧な解説が加えてあるなど、自国開催を盛り上げるための工夫が随所で見られていたと思います。おかげで徐々にルールを覚え、技についてもわかるようになると、よりおもしろく感じられるようになりました。今回の自国開催と日本代表の活躍が、私のようなファンの裾野を大きく広げたと思います。
1.ラグビーワールドカップの日本代表を見て思ったこと
にわかファンとしては、日本代表選手には外国人選手が多いことに驚きました。今回は31人中15人。外国人ではなく、海外出身選手という表現が正しいです。なぜならうち7人は日本国籍をもつからです。一方であと8人は外国籍ということになりますが、そこがラグビーワールドカップの特徴です。サッカーや野球、オリンピックはその国の国籍をもっていることが日本代表としての出場条件ですが、ラグビーは次のいずれかを満たせば代表としてプレイができます。
<日本代表条件>
①出生地が日本
②両親または祖父母のうち1人が日本出身
③日本に3年以上継続して居住(2020年からは5年以上居住に変更)
※その前提として、他国での代表選出経験がないこと(一部例外規定あり)
この独自の規定は、ラグビーというスポーツの歴史に由来するといいます。ラグビーは、19世紀初めにイングランドで誕生し、その後、ウェールズやスコットランド、アイルランドなどに広がりました。そして大英帝国時代に植民地に広がったことから、植民地に赴任し、その地でプレイをする者、あるいは植民地で生まれ育ち、祖国に戻った者が現れました。そうした背景から、国籍ではなく居住実績が重視されるようになった経緯にあるとされます。
2、帰化とは
日本代表のうち7人の選手は「帰化」をしています。帰化とは、「その国の国籍を有しない者からの国籍取得希望の意思表示に対して、国家が許可を与えることによって、その国の国籍を与える制度」です。権限は法務大臣にあります。
日本に帰化する外国人は1万人前後で推移しています。
参考:法務省民事局「帰化許可申請者数、帰化許可者数及び帰化不許可者数の推移」
帰化をすると日本国籍を手に入れられ、選挙権や日本のパスポートを得られる代わりに、自国の国籍は放棄することになります。元の国籍に戻りたくても難しいケースがあるといます。日本に住み続けるためには、「永住権」という選択もあります。違いは、永住権には参政権がないことや外国籍であることから公務員などに就けないことです。
3、帰化の条件
帰化をすることは本人にとって重要な決断であり、国にとってもむやみに受け入れはできないことから、申請条件はかなり厳しく設定されています。また手続きも煩雑です。
<帰化の条件>
法務省HPより抜粋
①住所条件
引き続き5年以上日本に住んでいること。
適法な住所でなければならないため、正当な在留資格が必要。
②能力条件
20歳以上でかつ、本国の法律によって成人の年齢に達していること。
③素行条件
素行が善良であること。犯罪歴の有無、納税状況、社会への迷惑等がないか総合的に判断。
④生計条件
生活に困ることなく、日本で暮らしていけること。
⑤重国籍防止条件
無国籍であるか、原則としてそれまでの国籍を喪失すること。
⑥憲法遵守条件
日本政府を暴力で破壊することを企てたり、主張するような者、あるいはそのような団体を結成したり、加入しているようなものは帰化を許可されない。
※日本と特別な関係を有する外国人(日本で生まれた者、日本人の配偶者、子、かつて日本人であった者等)については、条件が一部緩和される。
申請手続きの際には、必要書類として「帰化の動機書」の提出を求められます。これは「なぜ日本国籍を取りたいのか」を記載するものであり、帰化申請者本人の自筆で記入する必要があります。決まりはありませんが、次のような内容を書くと審査に通りやすいとされます。
<帰化の動機書に記入すること(例)>
・来日の動機と経緯
・日本での生活に関する感想(馴染めている、満足している)
・現況(仕事や収入、家族など。日本で安定して暮らせている)
・本国に帰る意思はない
・日本でやりたいこと(社会貢献など)
帰化動機書は、自筆指定のため、これだけの内容を記載するには相当な日本語力を備えていなければなりません。なかには、日本語を書く力が足りずに申請をあきらめる人もいるそうです。このように日本への熱い思いをもって、帰化を希望される方が毎年1万人ほどいることは、少子高齢化で生産人口減少の日本にとってありがたいことです。8月に城西国際部主催のイベントで、外国語学校に訪問をしましたが、生徒たちの明るい表情が印象的でした。多くの生徒は日本での就職を希望しての来日です。
国連の関連団体発表による「世界幸福度ランキング」で日本は、2019年度は58位だそうです。過去5年は50位あたりを低迷しています。この調査は質問を通して、調査に答えた人がどう感じているかをスコアリングしているので、仮に日本はラインキング上位の国よりも実際には恵まれている環境であったとしても、それに気付かず、幸福だと感じていなければ低く出てしまいます。
テレビやネットで、夢をもって来日して、日本を愛して帰化した方々の話を見聞きして、日本の良さを再確認することがあります。1人1人が自信をもって良い国だといえるようにありたいです。
城西支部 国際部
浦 美和子