コロナ禍の元での支援の一例

中野区中小企業診断士会 谷 進二

昨年3月より中野区の商工相談は一変した。従来は、経営相談、創業相談と、ICT、ライフサポートに関する融資相談が中心であったものが、セーフティネット認定作業のみと変わっていった。そこで、認定作業中にも、経営状態の確認と今後の経営改善戦略や企業の継続に向けた戦略等について、情報収集し、助言することに心がけて推進していった。
その中で、インバウンド向けのお菓子土産の製造・卸企業と知り合った。そして、当企業は経営支援を求めてきた。ついてはこのコロナ禍の経営支援について概述する。この企業の現在の需要はほぼ0、従業員4人は全員解雇して、融資を受けたいという。借入金が8000万円、従前売上1億3千万円で、インバウンド需要0が半年以上続けば継続は難しい状況であった。


まず支援したのは、従業員の雇用維持である。従業員を解雇したら会社の継続は困難になることを説得し、私が社会保険労務士であるため、雇用調整助成金を使って維持を図った。当然資金力がないため、着手金はとっていない。
次に、業務環境のテレワーク化と企業組織の構築である。コロナ禍は3年継続するという前提で、それでも耐えられる企業力を構築することが目的である。零細企業にありがちな組織環境で労務管理もまともにできていなかったのを東京都の「事業継続緊急対策(テレワーク)助成金」を使いながら、就業規則の策定、36協定の届出、リモートワーク環境の整備を実施し、全員が自宅で合っても業務ができる体制を構築した。これによりリモート下でも迅速な対応が可能となった。


次に実施したのは、ECの体制づくりである。東京都の「非対面型サービス導入支援事業募集要項」を申請実施した。同時に、ECを実施する限りはブランド価値の向上が重要と考え、まず、「東京都の名産品」認定を受けた。続いて商標登録を「東京都中小企業振興公社の知財資産ワンストップ相談」を活用し、事業者自身が無料で実施登録することができた。私の顧問料は、「働きやすい職場環境づくり推進専門家派遣」を使ってねん出した。以上が概観である。


この間、社長には新たな販売先獲得に尽力してもらった。結果、リアルで某大手百貨店複数店舗への納入は決まり、明るい未来が見えてきた。販売のまだ2割だが動き出しているし、従業員は全員100%の給与の支給を受けており退職することなどない。これが今後の原動力になろう。
今回の支援のポイントは3月の時点でコロナ禍が長期化することを共有できたことだろう。従って、様々な施策が長期的視点で取り組めたことが大きい。参考になれば幸甚である。