#39 D・I・Oエンターテインメント合同会社 代表 山切修二さん 女優 川渕かおりさん
「やりたい事を、考えて、自分達でやる。」という思いの下、音楽ユニット活動や舞台演出、所属女優マネジメント業務など様々な活動を行うD・I・Oエンターテインメント合同会社。社名の由来でもある「Do It Ourselves」のビジョンを持つに至ったきっかけから、現状の課題、今後の展望までを伺いました。海外でも活躍しているお二方の、日本の魅力を世界へ伝えるための活動とは。
「Do It Ourselves」セルフプロディースで活動の場を広げる
― まずは貴社について、教えてください。
山切 社員は、ギタリスト・シンガー・作曲家として活動する私と、剣舞師・女優・シンガー・声優として活躍する川渕かおりの2名のみです。起業した前提として、その二人がやっているKAO=S(カオス)という音楽ユニットの存在があります。弊社は、KAO=S の活動のマネジメント業務を行う会社として2014年に設立しました。社名の D・I・O は、「Do It Ourselves」 の略で、私たちのビジョンである「自分たちでやってしまおう」「自分たちがステージで活躍する会社」という意味が込められています。変遷を経て、現在は音楽のみならず、ゲーム・アニメ・映画・舞台の分野でも活躍している川渕かおりのマネジメントや、演出・和のパフォーマー派遣などが主な業務です。
- 山切修二さん
- 川渕かおりさん
― KAO=S結成のきっかけも教えていただけますか?
山切 14年前、自身の音楽活動中にモーションアクターとして仕事をしていた川渕かおりと出会いました。彼女の剣舞を見て感動し、私が剣舞に合わせた作曲を申し出たことで、協業することになったのがKAO=S結成のきっかけです。
― D・I・O(Do It Ourselves)のビジョンを持たれたのはなぜですか?
山切 ユニットのKAO=Sは、和楽器を導入した楽曲スタイルと、剣舞師でもある川渕がショウの中で日本刀の剣舞もするというのが特徴のユニットです。2012年に世界最大音楽コンベンションSXSW (サウス・バイ・サウスウェスト)に出演や、アメリカツアーの開催を実施し、結果は大成功でした。その際に、アメリカのアーティストたちが、自身で活動をマネジメントし、ダイレクトに売り込んで、道を拓くアーティスト活動スタイルに感銘を受けました。
私たちのショウは一度観てもらうと、次の仕事に繋がることが多いです。だからこそ、日本メジャーの会社や事務所からデビューして活動するよりも、アーティスト活動も営業活動も権利も、自分たちで管理し実施するスタイルが合っていると考えるようになり、「Do It Ourselves」のビジョンが生まれました。

KAO=S(カオス)ライブステージ風景
― 音楽ユニットから、剣舞など和のコンテンツまで、多岐にわたっていますね。川渕さん自身のご経歴も幅広いですよね。
川渕 そうですね。剣舞師、女優、モーションアクター、声優、、、最近では、舞台演出や脚本作成なども行っています。
― 山切さんはショウの演出もなさっているとか。
山切 音楽活動だけでなくライブ・舞台・イベント等の制作/演出業務も行っています。KAO=Sでやる和風のエンターテインメントショウが好評で、インバウンド含め海外の方向けのショウの演出を依頼されることが多いです。ドイツで毎年開催されている日独友好フェス「MAIN MATSURI」では、六年間ショウの総合演出を担当しており、フェスは今年ドイツ外務大臣表彰も受けました。また今年、東京で開催されたA B A C(A P E Cビジネス諮問委員会)国際会議の21カ国ご来賓向けの大パーティのショウも演出させていただきました。二人それぞれがアーティスト兼プロデューサーですが、川渕の案件では、私がマネージャー業務をこなしています。二人なので意思決定が早いため、小回りが効くんです。
― それは貴社の強みでもありますね。
山切 多才故に仕事になるという点では、例えば、川渕が主人公のモーションアクターを担当した2017 年発売のRPG「NieR:Automata (ニーア オートマタ)」では、モーション収録現場で声の良さを評価されたことがきっかけで、同作がアニメ化する際に、声優デビューを果たしました。このように、ある分野の仕事のクオリティが認められて、別の仕事に繋がることが多いです。私も川渕もやれることが多い反面、多くの業態に携わるには時間と体が足りません。会社としてひとつの業態に特化した営業努力が足りてないので、それぞれの業務体制の確立が課題ではあります。

インタビュー中のお二人
全ての現場が次の仕事に繋がるプロモーション
― 剣舞など和コンテンツのショウはまさに海外の方から人気ですよね。
山切 そうですね。ショウを観てくださった、各国の様々な方からオファーがあります。川渕の日本刀剣舞は海外では特に人気で、「LADY SAMURAI」の異名を持つほどです。
― 1度観てもらえれば、次の仕事に繋がるというのは素晴らしいですね。
山切 ショウのオファーが入ると、国や先方の希望に合わせた音楽やパフォーマンスを構成し、ローカライズした演出を考えているため、とても好評です。

剣舞ショウの様子
― 海外でのお仕事を国内でも活かそうと思ったことはありますか?
川渕 海外ではよくやっている剣舞ワークショップを、インバウンド向けに実施してみたいです。また、以前マレーシアのコミックコンベンションに呼ばれた際、モーションアクターのワークショップを実施しました。海外のコスプレイヤー達が、一緒になってポーズをとり、「かっこいいポージング」を学ぶ機会を提供できたんです。日本に来た外国人観光客の方々にも、こういった需要は同じようにありそうだなと感じました。
ビジョン(自分たちがステージで活躍)を実現するためのアウトソーシング
―あるべき姿を描いて、現状と比較する「逆算の経営」という視点で、現状課題などはありますか?
山切 私たちが設立当初に考えていた「自分たちがステージで活躍する会社」というビジョンに立ち戻りたいと考えています。川渕は、常に何かしらの形でステージに立っていますが、そもそもの会社設立のきっかけであるユニットKAO=S、そして私自身のアーティスト活動も増やしていきたいと思っています。勿論、事業の柱の一つとして考える以上、その活動で利益を出すことが前提です。諸々業務のアウトソーシングを実施し、時間や余力を生み出す必要があるので、どの範囲までアウトソーシングしていくのかが現状の課題です。
― マルチに色々できるからこその悩みもありますよね。
川渕 声優やモーションアクター、舞台脚本家・演出家、海外 CM 出演経験等の自身の幅広いスキルや経験をどう集約するべきか、国内ではどのスキルで存在認知されるべきなのか。そこも現状の課題です。

舞台稽古の様子(川渕さんは演技指導を行う:右)
― 今後の貴社のビジョンについて教えてください。
山切 インバウンド需要は続くと思われるので、和風のショウ演出や、剣舞師・和楽器奏者の派遣等の業務により力を入れていきます。豊島区内の会社なので、エンタメ色の強い豊島区と組んで、インバウンドやコスプレイヤー向けに特化した川渕の剣舞ワークショップイベント等を企画したりするのは、取り組みとしても面白いのではないかと考えています。その一方で、アーティストのマネジメント業務としては、これまでS N S展開などが弱かったので、そこを整えて、認知度向上やファンとのエンゲージメント強化を図り、起業時のビジョンに戻り、アーティスト活動ありきの会社という本来の軌道に乗せたいと考えています。近年では、川渕がNETFLIX配信アニメ「攻殻機動隊 SAC_2045」のモーションアクターや、アニメ「NieR:Automata(ニーア オートマタ)」の声優を務めるなど、アニメの分野でも知名度が上昇しています。川渕のファンの方と直接会うイベントの開催なども企画していきたいと考えています。
※ 取材内容は2025年1月現在
[企業情報]
D・I・Oエンターテインメント合同会社
|
(余録)
社長の山切氏には、課題意識がしっかりとあり、インタビュー中も新しいアイディアを出していらっしゃるのが印象的でした。その後伺った舞台稽古では、インタビュー時の川渕氏の朗らかな印象とは打って変わって、舞台のメンバーを纏める凛々しい姿も拝見出来ました。マルチにできることを広げるのも、尖ったところを伸ばすのも、どの道も選択できる、お2人のこの先をとても楽しみにしています。
(河出なみ・磯邊繭子)