#06 株式会社レスティル 代表取締役 足立直隆さん
(2021.11.8取材、2022.3.14執筆)
大手百貨店で長年営業企画や販促を担当してきた足立社長がずっと課題に感じてきたことは狭域商圏で商売する地域事業者の衰退だった。
レスティルが目指すゴールは地産地消型の地域活性。デジタル機能とアナログ機能が補完し合うことで、お店とお客様の豊かな関係性を構築する狭域ECプラットホーム“ポスケット”を開発・提供することで、地域活性に貢献すべく汗を惜しまず奮闘している。取材インタビューの中から足立社長のお話をご紹介します。
地方都市で見たもの -起業につながる原体験-
足立 私が大手百貨店の地方店に勤務していたとき、商店街など地域の店舗が、ECや郊外のショッピングセンターなどにお客様を奪われ衰退していく状況を何度も目にし、こうした地域事業者に対し何か支援できるような仕組みを作れないだろうか、と思ったことが起業の動機だった。
足立 そして百貨店を退職後2017年に起業し(株)レスティルを設立。2018年には「ものづくり補助金」の採択も受け開発を進め、試行錯誤と改良を繰り返す中で、ようやく2021年6月にβ版”ポスケット”を完成させることが出来た。
地域事業者の存在意義
足立 地域のお店の衰退は、経済面だけでなく、地域社会の安全安心や、EC集中による燃料や梱包材の無駄等の環境面、高齢者などの買い物難民、そして地域コミュニケーション希薄化など様々な社会課題に連鎖している。そういった意味で、地域のお店は社会にとって必要不可欠な存在であり、街を元気にする立役者であってほしいと願っています。
狭域ECプラットホーム“ポスケット”
足立 “ポスケット”は「狭域商圏に特化したECモール」であり、一般的な楽天やAmazonとは全く違う仕組みである。“ポスケット”に出店可能な業種は物販店だけでなく、飲食店、サービス業など多岐にわたる。その一方で、店舗規模は大手企業のチェーン店ではなく、地域に根差した比較的小規模な事業者をイメージしている。そして、それらの地域事業者は「新客の獲得手段がない」、「既存客のなじみ化が難しい」、「時代に則した販売ツールがない」といった課題を抱えている。
足立 “ポスケット”は、①店舗と消費者の距離が近い。②お店というリアル拠点がある。③消費者同士の距離も近い、という狭域商圏ならではの3つの特性が活きるECサービスを目指している。消費者は、“ポスケット”上で自身の住所を中心にキロ数を設定し、近所にどんなお店があるのかを検索しそのお店とコミュニケーションが取れる。
また“ポスケット”はチャットベースのECなので、商品を選んでカートに入れる行為と、お客様からの相談や店舗からの提案などのコミュニケーションが、チャット上で同時に行なわれる。
たとえば、クリーニング店のメニューに革製品の洗濯が載っていないとき、お客さんが「革製品のジャンバーの洗濯ができませんか?」と尋ねたり、店から「メニューには載せていないが、5500円で承ります」などと返信できる。もちろんこのチャット上から商品をカートに入れ決済することもできる。
このチャットは“ポスケット”上でずっと残るので、タイミングを見てお店から新しい商品やサービス提案をしたりして、お客様の購入履歴として活かすことも出来る。
さらに“ポスケット”は広告発信機能も兼ね備えており、店舗は性別や年齢、購入履歴等の条件を設定し、自社のターゲット像に近い層に対し、適切なタイミングでメール広告を発信できる。
“ポスケット”上の顧客基盤を地域全体で共有
足立 “ポスケット”へ出店する事業者のメリットは、今までリーチする手段のなかった新規客開拓やなじみ化などのお客様作りが出来ること。たとえば、10の出店店舗が各10人の常連客を勧誘すれば、“ポスケットモール”上に100人の顧客基盤が出来ることになる。この顧客基盤を10店舗が互いに連携し活用していくことで、狭域商圏の最小単位としての地域コミュニティができることになる。
足立 一方、近隣消費者のメリットは、近所ならで安心感や融通が利く対応といったことに加え、ネットで買ったり店舗に行ったりといったネットとリアルが融合したお買い物体験が可能となること。 さらには、ここにしかないモノやヒトを応援したいという地域住民の心理的なモチベーションも上げて行きたいと考えている。
[企業情報]
株式会社レスティル |
(余録)地方都市にある実店舗小売り商店の価値を「お店とお客様のホットライン」だと突き詰めてチャット機能を充実したECサイトを考案し、その実証実験の中で「個々のお店のお客様を街全体のお客様にする」という考えにゆきついたそうです。この“ポスケット”は街の活性化に大きく寄与するでしょう。(中小企業診断士 槌田博)