#07 イントランスHRMソリューションズ株式会社 代表取締役社長 竹村孝宏さん

 研修や組織制度構築など人材育成事業を行う、イントランスHRMソリューションズ株式会社代表取締役社長の竹村さんにお話を伺いました。

様々な資格をお持ちで、中小企業診断士の先輩でもあります。会社設立の経緯や苦労など、紆余曲折を経ながらも成長する会社のビジョンとはどのようなものなのでしょうか。創業後の幸福度の浮沈も合わせて語っていただきました。

竹村孝宏さん

もっと教えたい

― 創業の経緯を教えてください。

竹村 もともと会社勤めをしていた時は、マネジメントに必要な知識などを得るために、自分で色々な勉強をしてきました。自分だけではなくメンバー全員が研修を受けたり、勉強することによって、チームの業績が変わってくるということはよく感じていました。

 あたりまえのことですが、仕事は人次第なので、メンバーによってチームの業績が変わります。部下がいかに成果を出すか、チームとしてどうやって成果を出すか、ということを考えると、教えることが必要になります。自分がやってきたこと、感じたことを部下に具体的に教えていくうちに、もっと教えたい、研修を中心にやっていきたい、と思うようになりました。

 1999年に中小企業診断士登録をした後、アルバイトで研修やセミナーをする機会がありました。その時の経験から、研修を中心にこんなことやっていけばいいのか、というおぼろげなイメージがあり、会社を設立しました。正直なところ、一回は社長というものをやってみたかった(笑)ということもあり、2017年に会社を始めました。

甘い期待や見込みは全部外れた

― スタートは順調でしたか。

竹村 創業時には予想していなかったのですが、幸福度にものすごい波があります。すごくやる気になるところと落ち込むところのギャップがすごい。最初は期待もあり幸福度は高い状態でしたが、さっぱり仕事が取れず、気持ちはどんどん落ち込みました。

 お客様が全くいない状態で安易に会社を始めましたが、研修会社をやっている知り合いがいて、(過去に講師をやっていた産業能率大学等の)講師のつながりがあるので、なんとかやっていけると思っていました。開業してすぐに12社くらい知り合いの会社を回って、開業の報告と研修プログラムとして考えていることなどを伝えましたが、全く仕事の紹介などはありませんでした。今考えればあたりまえの甘い期待で、見込みは全部外れました。

 困った挙句、異業種交流会に参加したり、仕事を取るためにいろんなことをしましが、どれもうまくはいきませんでした。異業種交流会は、保険や不動産のようなBtoCにはマッチしますが、研修はむずかしいと感じました。というのも、そもそも参加者の中には研修を受けたことがない人も多く、なんのために研修が必要なのか分からない、と言われることも度々ありました。1年くらい活動しましたが全然だめでした。

 なんとかならないかと人事向け展示会に出展してみたところ、そこからちょっとずつ引き合いが来るようになりました。展示会は出すだけで費用がかかります。出費はできるだけ抑えようと思っていましたが、結果的にはやってみてよかったと思います。ホームページからも少しずつ話が来るようになりました。

幸福度はどん底に・・・

― もともと講師をされていた経緯もあり、ビジネス書も出版されていますので、研修の引く手はあまただと思っていましたが、仕事を取るために大変な苦労がおありだったのですね。

竹村 仕事が取れるようになってくると、講師もメニューも増やしていく必要があります。中小企業診断士の知り合いなどから契約講師を増やしていきました。仕事が増えてくるにつれて、幸福度も上がりました。

 ところが、講師が増えてくると質の問題が出てきます。会社は2年目に入り、仕事もちょっとずつ増えて来た頃に、あるお客様から講義中に講師によるパワハラがあった、とクレームが入りました。

― 研修講師によるパワハラとはどういうことでしょうか。

竹村 ある会社の新人研修だったのですが、講師が研修生のプレゼンテーションを聞く態度が横柄だったり、ダイエットの話の中で、女性ならダイエットは当然というような発言があり、クレームになりました。この講義は無料にして、後日代替の講義も無料で行いました。実はこの会社は、新人研修のあとに管理者研修も予定されていたのですが、すべてキャンセルになりました。当時の売上の3割がなくなってしまい、幸福度は急落しました。その後は講師の採用に慎重になり、面接をしたあと仮想講義をしてもらって、しっかり選んだうえで採用しています。

中国で新たな講座開設

中国での講義の様子

― 研修のほかに、事業内容にある工場のコンサルティング事業についても教えてください。

竹村 クレームの後、業績が少し上向きになって来た頃に、中国で仕事をしていた時の部下から一緒に仕事ができないか、という話が来ました。その方が転職して入った中国のコンサルティング会社では、中国人経営者を日本に連れてきて日本のマネジメントを勉強させる、というビジネスをやっていました。中国国内で日本のマネジメントを教える講義ができないかという話があり、河南省鄭州市のビジネススクールで開講することになりました。鄭州市は人口1000万人の大都市で、日産自動車の工場などがあります。

 教えるのは工場の改善で、診断士にはなじみの深い5Sを教えたりします。中国では、2015年くらいから「製造2025」というスローガンで、製造業を世界一にするという国家プロジェクトが始動しました。中国は他社製品をコピーするのが得意で技術力は非常に高いのですが、マネジメントは確立されていません。経営者の中でも意識の高い人はそのことが分かっているので、日本のマネジメントを習いたいと思っています。そのような背景から、2019年11月に経営幹部向けに第一回の講義を行いました。

工場における「5S」の解説

 その後も月一回講義を行う予定でしたが、2020年からは新型コロナウイルスの影響で、講義ができなくなってしまいました。今もまだ再開できていません。経営幹部向け講義をすることによって、受講者が経営する会社からコンサルティングをやってくれないか、という話がくるのを期待していたのですが結局うまくいかなかった。期待で上向いていた幸福度は、また落ち込んでしまいました。

人材育成のために熱血指導

― 中国事業は頓挫してしまいましたが、現在はどのような取り組みをされているのでしょうか。

竹村 研修が中心です。単発のテーマではなく、継続的に取り組むことのできる研修を設計しています。そもそも、規模の小さい会社は社長の目が届くので研修は必要ありません。従業員が30人くらいになると、そろそろ研修が必要になってきます。従業員が50人を超えてくると、社長の意思を汲んだ現場のマネージャーが一般社員を管理する必要が出てきます。そのようなミドルマネジメントや管理者向けの研修を軸にしています。

 お客様の成長に貢献できるように、自分の経験を踏まえて伝えたり、プログラム構成を考えたり、人材育成に熱意を持って取り組んでいます。お客様の状況が分かってくると、今こういう状況だからこういう研修をしましょう、という提案ができるようになってきます。そういう意味では、やればやるほどお客様の求めるものが提供できるようになる。その会社に必要な研修というのは、社長の考え方次第なので、これという決まったものではなく、お客様のニーズにあわせてアレンジしていく必要があります。

お客様との繋がりが自分たちの飛躍の源泉

― 自社の強みを教えてください。

竹村 会社によって、1年間でこういうレベルを求めている、こういう内容をしっかいやってほしい、という希望があります。お客様の状況に応じて、オリジナルのプログラムをつくることができる、ということが強味で、差別化できているところだと思います。

 研修プログラムは、例えば管理者研修であれば、ビジョンを作ったり、部下の育成であったり、コミュニケーションの取り方、といった要素を組み合わせて作っていきます。お客様のニーズに合わせて色々考えていくことが、自分たちのメニューを増やすことになります。結局、たくさんのお客様と繋がっていくことが、自分たちの飛躍に繋がります。

新しい研修のかたち

― 現在は人材育成を中心に取り組んでおられますが、ゴールのビジョンはどのようなものでしょうか。

竹村 結局は、自分がやってきた経験をできるだけ多くの人に伝えたい、ということです。会社にとって、人材育成は間違いなく必要なことなので、できるだけ短い時間で人材を育成できれば、会社の発展を早めることができます。これから成長していく会社の成長エンジンとなる人材を、少しでも多くの会社  ー中国も含めてー で育てていきたいと思っています。

― 今後取り組みたいことはありますか。

竹村 研修って意外と昔から変わってないと思いませんか?eラーニングとかリモート研修なんかも最近はありますが、自分が入社した頃から内容はそんなに変わっていない。

 まだ確かなものはありませんが、なにか違う形態で、次の研修のかたちというのがあるのではないかと思っています。例えば、通信研修の添削は、AIを使う取り組みがあります。研修も、かたちを変えたらもっと効率的にできるのではないか、別のかたちがあり得るのではないか、と思っています。

 AIだけに任せて人間がいらなくなるということはありえませんし、人間が補助的なものになってしまうと面白くない。AIと人間が絡むことで、良い効果をあげることができるようになれば面白いと思います。

 

[企業情報]

イントランスHRMソリューションズ株式会社
社員研修、セミナー、コンサルティング事業、学習用教材の企画・販売
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(余録)多様な講師陣を揃えられている竹村社長に、人脈の作り方を伺ってみました。曰く、「簡単なのは募集することです。募集して報酬を払えば人は集まります。でも峻別するのは難しい。講師のレベルは会社の信用そのものであり、最終的に、必ず自分の目で判断することが大切です。」 (水越嘉隆)

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