国際部 鮫島 創
1. はじめに
2020年から2022年まで、私は前職で執行役員グローバル事業部長として香港に駐在し、香港子会社を始め、上海、バンコク、シンガポール、ジャカルタなど東南アジアの子会社・関連会社全体のマネジメントに携わりました。
この時期、日本国内では「国家安全維持法(国安法)施行を境に、香港は中国に完全に支配され、国際金融センターとしての地位を失いつつある」という論調が支配的でした。民主化運動の抑圧、外資企業の撤退、言論の自由の制限といったニュースが連日報じられ、「香港の将来は暗い」という見方が定着していったように思います。
しかし、実際に現地でビジネスを展開し、日々香港の街を歩き、現地スタッフや取引先と対話する中で、私が感じたのはそれとは大きく異なる現実でした。本稿では、実際に現地でマネジメントを経験した立場から、報道だけでは見えてこない香港の実像と将来の可能性について、異なる視点を提示したいと思います。