#40 パラリノベ株式会社 代表取締役 寺門球江さん
一人ひとりのライフスタイルが尊重され、多様な暮らし方が大事にされている昨今、個々の想いや希望に合わせた住まいづくりのニーズが高まっています。パラリノベ株式会社は丁寧なコンサルテーションによるオーダーメイドの住居を、コストや時間に負担をかけず実現する「中古物件×リノベーション」のワンストップサービスで提供しています。同社を創業された寺門代表にこれからの住まいづくりについて伺いました。
理想から住まいを創造する仕事
― はじめに貴社の概要について教えてください。
寺門 都内及び近隣3県を主たる対象に、リノベーションによる住まいづくりを行っています。具体的には不動産の仲介、コンサルティング、設計・デザイン、リフォーム・リノベーションの施工という一連の仕事をワンストップサービスで提供しています。近年、都心部では不動産の価格が上がっており、理想の住居を得ることは簡単ではありません。中古物件・リノベーションという住まいづくりを提案し、予算を抑えつつ、お客様の希望や理想に合った住居を実現します。
― 昨今、中古・リノベーションのニーズは高まっているのでしょうか。
寺門 鉄筋コンクリートのマンションは構造上100年もち、適切に修繕していれば築50年の中古物件でも状態は大変よく、安心して選択できます。近年は中古に対するイメージも変化しており、時間を経た物件の味わいのよさが認識され、シニア層のみならず、若い家族からも関心が向けられています。

代表取締役の寺門さん
― 寺門代表はファッション・インテリアのスタイリストから不動産業界に転職され、定年退職を機に独立開業されました。開業の経緯と目指している会社像を教えてください。
寺門 前職ではB to Bの仕事がほとんどでした。私自身はエンドユーザーの希望を丁寧に聞き、お客様に理想の住まいに住んでもらえるような仕事がしたいという思いがありました。家族も独立し、自らの判断と責任で仕事ができるようになったため、自身の名前のイタリア語パラ(球)とリノベを社名とし、独立開業しました。リノベーションを通じて一人ひとりのお客様が頼んでよかった、と喜んでもらえることを最大のモチベーションとする会社でありたいと思っています。
このため、まずお客様の理想があり、これを実現するための最適なサービスを提供するように心がけています。大手企業では、パッケージプランを中心としているところや、無料での打合せ回数をある程度決めているところもあります。弊社では回数に制約を設けず打合せ、理想や希望に細やかに対応するオーダーメイドによる住まいづくりを重視しています。
暮らしを共に描く質問力と提案力
― 住まいの相談からリノベーションまで、どのように住まいづくりが進むのでしょうか。
寺門 お客様はインターネットサイトの中古物件をご覧になって、相談いただく形が一般的です。まずリノベーション済みの物件に関心がある方が多いです。その際に、同じような物件でリノベーションされておらず、予算より低価格のマンションの図面も提供し、フルリノベーションによって同価格または低価格でお客様の希望の住まいづくりができることをお伝えします。リノベーション済みの物件も一般に住みやすく作られているのですが、理想や希望に細かく応えられるのがフルリノベーションです。これに関心を持っていただければ、リノベーションについての打合せを行います。
具体的には、まずお話を伺い、どのような部屋がお客様に向いているか検討し、設計・提案します。鉄筋コンクリートのマンションは基本的に壁を取り払っても問題ない構造が多く、小さな部屋が複数あるより、大きなリビングにしたい、といった要望にも応えることができます。一方で排水管の位置は容易に変えられず、トイレなど水回りの位置を大きく見直すことは簡単にはできません。このように高い自由度と一部の制約の中で提案していくこととなります。次に設計図面を見ながら内装を含めて一つ一つ説明し、お客様の希望を確認して、必要に応じて見直しを行います。詳細内容を決定した後、リノベーション工事に入るという流れになります。

施工事例―独立キッチン・和室2間をLDKに間取り変更
― 一人ひとりの理想の住まいをオーダーメイドでつくられていますが、きめ細かな提案はどのように生み出されているのでしょうか。
寺門 お客様にとって、理想の住まいをすべて言葉で説明することは容易ではありません。そのため、打合せにおいて出来るだけイエス・ノーで答えられる具体的な質問をしています。例えば、「リビングでは何をされますか」と聞いてもお客様は考え込んでしまいます。より具体的に「リビングを一番長く使われる方は誰ですか」、「リビングでお酒を飲みますか」といった質問をしています。お客様が明確に答えられるように質問することで、お客様の希望や理想が見えてくるようになります。お酒を飲まれるのであれば、リビングに間接照明をいれましょうか、昼間は明るく、夜は明かりを落として過ごせるように明るさを調整できる機能をつけましょうか、と提案していくことができます。
その他にもショールームにお連れし、生活スタイルを伺いながら、オプションを提案することもしています。時間や手間を惜しまず、お客様にとっての真の理想を引き出すことを大切にしています。
― 住まいの提案にあたって、暮らし方も提案されているのですね。
寺門 そのとおりです。最近は共働きのご家族も多く、キッチンではタイムパフォーマンスが重視されています。時間は皆に平等に与えられると考えられていますが、工夫とコストをかけることで生み出すこともできます。例えば食洗機を入れることによって、お子様の宿題を手伝うこともできます。毎日、仕事と家事を両立されているご家族に、手を抜くのではなく、時間を短縮する、手間をかけずにやれるものがたくさんあることを伝えるなど、暮らしの理想を現実する提案力も重視しています。
ワンストップによる迅速性と専門性
― 理想を叶える中古・リノベのワンストップサービスとはどのようなものでしょうか。
寺門 マンション購入とリノベーションはそれぞれ別に行うものとの認識が一般的ですが、それをワンストップで行います。ワンストップを行うにあたり、企業によって不動産は不動産担当、設計は設計担当、工事については施工担当が各々対応するところもありますが、弊社は一人担当制です。マンションの案内から工事終了まで、すべて一人で担当します。そのため、担当者間の連携不足でお客様が何回も同じ話を伝えなくてはならない、といったことは起こりません。一人の担当者が何回も打合せるため、信頼を得て理想やこだわりを一緒に実現していくことができます。
物件の紹介は他の不動産会社とも連携し、工事は大工、設備業者、電気業者の方々に依頼します。実績・技術力のある関係業者と連携し、担当者が全体を統括して最適な住まいをつくっていきます。

施工事例―キッチン・和室2間をLDKと折れ戸で仕切れるワークスペースに間取り変更
― ワンストップサービスはどのような点で評価されているのでしょうか。
寺門 まず迅速性です。物件探し・購入とリノベーションの設計を同時並行することで、時間を短縮できます。また、リノベーションは現場調査、見積提出までは無料、設計は料金を徴収するところがほとんどですが、設計まで一貫して無料とし、お客様にできるだけ負担をかけず、迅速性を実現します。購入から完成までに時間がかかると、今住んでいる住まいと重複した費用が発生してしまいますので、スピードは大事です。
次に、ワンストップで対応することによる専門性も評価されるポイントです。例えば、不動産の仲介だけの担当である場合、現場でお客様から「このキッチンを対面式にできるか」と問われて、正確に答えられない可能性があります。ワンストップで対応することでその場で専門性を持ってリノベーションを打合せていくことが可能となります。このように、ワンストップであるがゆえの迅速性と専門性により、負担なく、質高く、最短経路で理想を実現できると考えています。
パラリノベが目指す住まいづくりの逆算
― 中古×リノベーションの将来展望を伺えるでしょうか。
寺門 日本人の住居に対するこだわりは欧米と比べてまだ強くないと思います。日本では「衣食住」といわれますが、欧米では大切にしたいものの順番として、「住」が最初にあります。住とは人が長く過ごす空間であり、自分の生活スタイルに合い、居心地がよいものであれば、豊かな気持ちになります。今後、日本での居住空間やインテリアに対するこだわりが高まり、生活の基本が「住」食衣という順で重視されてもよいのではないかと考えています。

丁寧なコンサルテーションで住まいの希望を引き出す
その中で、中古・リノベーションは高い潜在性をもっています。新築やリノベーション済み物件は、そこに入るか否かを選択することしかできません。お客様は今の生活の中で、住まいがこうであったらよいのに、という様々な希望を持っておられます。費用を抑えつつ、お客様の様々な希望を自由度高く実現できるのが中古・リノベです。中古物件に対する抵抗感は減っており、今後ますます需要が高まっていくと思います。
― 将来に向けての取り組みを教えてください。
寺門 将来的には、より自由にリノベーションの希望を実現するべく、マンションを買ってからリノベーションを考えるのではなく、「このような住まいをリノベーションによって実現したい」という希望をまず先に伺い、次にそれを実現できる物件を紹介する形を導入したいと考えています。住まいづくりの逆算です。このような住まいづくりが可能な中古・リノベの価値を一層発信していくことも重視します。今後もお客様の理想を最大限、負担なく叶える住まいづくりに取り組んでいきたいと思います。
※ 取材内容は2025年4月現在
[企業情報] |
(余禄)一人ひとりの住まいの理想から出発し、それを実現するための最善のアプローチを実行する寺門代表は正に「逆算の経営」を実践されています。住まいに対する理想やこだわりは、もっと自由に実現できる、と寺門代表が提案される中古×リノベーションは、個々のライフスタイルを大事にする社会、持続可能な社会の中で、今後益々注目・期待されるものであると強く認識します。(齊藤 幹也)