#23 DIORAMA CAFE(株式会社FUNKY BUSINESS) 店長 吉仲啓二さん
西池袋の路地で虹色のキッチンカーが存在感を放つ、パンケーキとコーヒーのお店DIORAMA CAFE。元美容師である店長の吉仲さんは、「人とのつながり」を大切にすることで自らやスタッフ、お店の可能性を広げ、成長させてきました。その成長の連鎖は、地域で学ぶ高校生、アート作家、池袋の街、飲食業界にまで及んでいきます。
※DIORAMA CAFEは2023年11月に閉店しました。
他にないもの作る 終わりなき挑戦
― どのような経緯で店長に就任されたのですか。
吉仲 当社(株式会社FUNKY BUSINESS)代表の西村からの誘いがきっかけです。当社はもともと、美容室を運営する会社でした。私はかつて別の会社で美容師として働いており、その後、飲食業界に転職しました。当時働いていた飲食業界の職場を辞めようと思っていた時に、美容師時代の上司だった西村から数回目の誘いを受けたため、当店の店長になったという経緯です。西村は、私と一緒に働きたいという考えを長年持ってくれていたそうです。私がカフェ業態の仕事に携わってきたことから、当社としても初めてカフェ事業に進出することになりました。
― 就任当初、どのようなお気持ちでしたか。
吉仲 「とにかく新しいことを頑張ろう」という気持ちでした。そこで、常に成長を目指していく姿勢で仕事に取り組みました。
― オープンから4年間、力を入れてきたことは。
吉仲 「いろいろなお客様に食べてもらいたい」、「既存のお客様も飽きさせたくない」という思いで、メニュー開発に力を入れてきました。いつも「他のお店にないものを作りたい」と考えています。そのため毎月、季節のパンケーキをお出ししています。例えば、私はずんだ餅が好きなので、生地にお餅を練りこんだ「ずんだ餅パンケーキ」を2年前に季節限定メニューとして提供しました(筆者注:現在提供中の季節限定メニューは異なります)。SNSでの発信にも、自ら写真を撮って掲載するなど力を入れているので、好きな人は調べて来店してくれます。
― そうした思いの達成度合いは。
吉仲 数字で表すのは難しいですが、50~60%といったところかなと思います。他にないパンケーキを出せている点は強みです。しかし、次々と課題が出てくるので、決して100%にはならないですね。経営に終わりはないんです。
「ファン作れ」、つながりで学び広がる
― 店舗運営で大切にしていることは。
吉仲 人同士のつながりです。美味しい料理はどこにでもありますが、「人」は唯一無二です。お客様とも私が自ら会話をしに行くので、評価を直接聞くことができます。また、仕入先とも良好な関係を保っているので、メニューの提案などをもらえることもあります。スタッフにも、「自分のファンを作りな」と伝えています。そうすれば、仮に別の場所で働くことになってもお客様がついてきてくれるので。
― このコラムの第13回で紹介した、中高生に学習機会を提供するNPO法人テラコヤさんへの協力も、そうしたつながりから始まったものですか。
吉仲 はい。当店はテラコヤさんが運営する「カフェ塾テラコヤ」の会場として場所を提供しています。前田代表から話を聞き、「取り組みとして面白いし、社会貢献になるならやってみよう」と考えてこの活動を始めました。うちのお店の前の虹色のキッチンカーを使って高校生がカフェを運営しており、彼らにアドバイスすることもあるのですが、それが自分たちの勉強にもなっています。
― どんなことが勉強になりますか。
吉仲 例えば、高校生のコーヒーの淹れ方が私の知っているものと違ったので聞いてみたところ、コーヒー専門店の師匠から教わったこだわりの淹れ方だと教えてくれたのです。そんなやり方もあるのかと勉強になりました。逆に、彼には「そのストーリーをお客様に伝えれば付加価値が高まるよ」と助言しました。若いアルバイトさんからも、学べることは多くあります。例えば音楽など若者のトレンドを教えてもらい、店で活かしています。私は成長し続けたいので、年齢や立場にこだわらず、教えてもらえるような関係性を築くようにしています。
― 若い人を温かく指導しつつ、その相手からの学びをお店やご自身の成長にも活かしているのですね。人とのつながりを大切にする点は、接客業である美容師ご出身ならではと感じます。
吉仲 そうですね。元美容師である私には職人かたぎなところがあるので、人に厳しく言いがちです。しかし頭からは否定せず、相手の思いを尊重しているので、わかってもらえれば良い関係を築けます。昔の同僚など、関係を長く保っている人も多いです。
アートに囲まれたこだわりの店内空間
― 独創的な外観やインテリアにも、元美容師としての感性が活かされているのですか。
吉仲 キッチンカーや店内のインテリアは、代表の西村によるものです。西村も元美容師なので、ご指摘は一部当たっているかもしれません。また、ここは当社が運営していた美容室とアパレル店の居抜き物件なので、独特の雰囲気になっているのかもしれませんね。装飾の中には、スタッフの知人で近所に住む作家さんの絵など、人とのつながりに由来して展示させてもらっているものもあります。
― そういえば、アート作家さんの絵を不定期で店内に展示されているとか。
吉仲 現在の場所に移転する前、壁に何か飾りたいなと思っていたところ、作家さんの認知度向上のため活動するCreaterminalさんという団体から話が来たので、展示場所の提供を始めました。アート界への貢献になるだけでなく、お客様が喜んでくれたり、SNSで広まったりといった効果も期待できます。
地域と共に つながる成長の連鎖
― 店舗の運営に課題はありますか。
吉仲 原材料費の高騰や賃上げなど、原価アップの流れには苦労しています。当店では安さよりも美味しいものを出すことにこだわりたいので、原価の上昇分はなるべく売値にもスタッフの給料にも反映させていきたい。難しいですが、その方が飲食業界全体の成長にもつながると考えます。インバウンド需要も上手く取り込んでいきたいです。
― 今後の目標を教えてください。
吉仲 池袋西口のアイコンになることです!池袋は再開発も進行中で、活気ある街です。地域の成長の一助になれたらと思います。
[企業情報]DIORAMA CAFE (2023年11月に閉店) 〒171-0021 東京都豊島区西池袋3-30-1 Nビル1F https://dioramacafe.funkybusiness.co.jp/ 株式会社FUNKY BUSINESS 〒171-0014 東京都豊島区池袋壱丁目41番地6号 エスペランザ池袋3階 |