いよいよサッカーワールドカップ2022が始まる

国際部 中村 寛

 2022年11月21日(月)、4年に1度のFIFA(国際サッカー連盟)ワールドカップカタール2022が開催される。第22回大会である。サムライブルーと呼ばれる日本代表は1998年フランス大会から7大会連続7回目の出場となる。サッカーに興味のない方もいらっしゃるとは思うが、今回はサッカーワールドカップについて述べさせていただくことをご容赦願いたい。

1. 歴史
 第1回大会が開かれたのは92年前の1930年、開催国は南米ウルグアイである。ウルグアイは1924年パリオリンピック、1928年アムステルダムオリンピックで連続1位となり開催国に選出された。第1回大会では地区予選がなく全チームが招待されての出場であった。しかし出場国の中には列車や船での移動を嫌って辞退したところも多く、最終的に参加したのは南米7か国、ヨーロッパ4か国、北中米2か国の13か国のみであった。実は日本も招待されていたのだが、財政面の問題で参加が見送られた。日本がもしこの第1回大会に出場していれば、63年後のJリーグ発足を待たずして日本におけるサッカーのステイタスは上がっていたであろう。
第1回大会の決勝では隣国アルゼンチンを2-1で破って開催国ウルグアイが優勝している。因みに現在FIFAランキング13位のウルグアイは今回カタール大会で4大会連続14回目の出場となるが、人口は350万人程度の小国である。ウルグアイ以外に出場チームで人口が1千万人より少ないところを挙げると、スイス(860万人、FIFAランク16)、セルビア(690万人、同25位)、デンマーク(580万人、同10位)、コスタリカ(510万人、同34位)、クロアチア(390万人、15位)、ウェールズ(330万人、同19位)がある。一方人口1億2000万人の日本は、今回を合わせて本大会出場7回目となるが、FIFAランキングは24位、32の出場国中20位となっている。人口が多ければ強いというわけではない。
 FIFAワールドカップは第二次世界大戦中開催されなかった1942年、1946年を除いて4年毎に催され、世界中のサッカーが盛んな国々を熱狂の渦に巻き込んできた。今回の第22回大会までの開催国を見てみよう。1930年ウルグアイ以降、イタリア、フランス、ブラジル、スイス、スウェーデン、チリ、イングランド、メキシコ、西ドイツ、アルゼンチン、スペイン、メキシコ、イタリア、アメリカ、フランス、日本/韓国、ドイツ、南アフリカ、ブラジル、ロシア、今回カタール。複数会の開催国は、イタリア、フランス、ブラジル、メキシコ、ドイツ(西ドイツ)でそれぞれ2度行われている。
 優勝国は、1930年ウルグアイ以降、イタリア、イタリア、ウルグアイ、西ドイツ、ブラジル、ブラジル、イングランド、ブラジル、西ドイツ、アルゼンチン、イタリア、アルゼンチン、西ドイツ、ブラジル、フランス、ブラジル、イタリア、スペイン、ドイツ、フランス。複数回の優勝国は5回のブラジルを筆頭に、4回イタリア、ドイツ(西ドイツ)、2回ウルグアイ、アルゼンチン、フランスの6か国。1回優勝がイングランドとスペイン。ラテン系の国の優勝が多いが、今回カタール大会には優勝経験国の中で唯一イタリアが出場を逃している。

2. 今回の見どころ
 一番の見どころはやはり日本が入ったグループEだろう。ワールドカップではAからHまで8つのグループでそれぞれ4チームがリーグ戦を戦い、各グループ上位2チームが決勝トーナメントに進む。我ら日本のグループに入ったのは優勝4回のドイツ、優勝1回のスペイン、今回6回目の出場となったコスタリカだ。日本は最高成績のベスト8を目指しているが、今大会屈指のタフなグループで、そう易々とはいかないだろう。いやなデータがある。日本は初出場の1998年フランス大会以降連続出場を続けているが、成績はグループリーグ敗退とベスト16が交互に記録されており、前回ロシア大会はベスト16だった。グループリーグをなんとか突破したが、決勝トーナメント初戦でベルギーに逆転された。
今回大会に出場している国のうち現在のFIFAランキングベスト10は、1位ブラジル、2位ベルギー、3位アルゼンチン、4位フランス、5位イングランド、6位スペイン、8位オランダ、9位ポルトガル、10位デンマーク、11位ドイツである。これら上位10チームのうち2チームが同じグループに入ったのが、グループE(スペイン・ドイツ)とグループD(アルゼンチン・デンマーク)で、それぞれ日本・コスタリカ、チュニジア・オーストラリアにとっては不運な組み合わせとなった。
グループBに入ったウェールズは、欧州予選のプレーオフ決勝で世界中の期待を跳ね返し、ウクライナを破って64年ぶりの出場となった。本戦では是非ウクライナの分も頑張って欲しい。
個人的にはグループGのブラジルに注目したい。過去5回の優勝を誇るが、2006年ドイツ大会以降4大会はすべてヨーロッパ勢が優勝している。クラブチームの大会であるが、2004年まで日本で開催されていたトヨタカップでは欧州と南米のチャンピオンによってクラブ世界一が競われた。「組織力のヨーロッパサッカー」対「個の技術力の南米サッカー」の視点で注目されていたが、最近のワールドカップはヨーロッパサッカーが優勢であり、今大会ではブラジルに限らず、アルゼンチン、ウルグアイ、エクアドルの南米勢に頑張って欲しい。

【グループリーグの組み分け(カッコ内は8/25時点FIFAランキング)】
A: カタール(48)、オランダ(8)、セネガル(18)、エクアドル(44)
B: イングランド(5)、USA(14)、イラン(22)、ウェールズ(19)
C: アルゼンチン(3)、メキシコ(12)、ポーランド(26)、サウジアラビア(53)
D: フランス(4)、デンマーク(10)、チュニジア(30)、オーストラリア(39)
E: スペイン(6)、ドイツ(11)、日本(24)、コスタリカ(34)
F: ベルギー(2)、クロアチア(15)、モロッコ(23)、カナダ(43)
G: ブラジル(1)、スイス(16)、セルビア(25)、カメルーン(38)
H: ポルトガル(9)、ウルグアイ(13)、韓国(28)、ガーナ(60)


3. 日本代表
 本原稿を作成している時点では、まだ日本代表の最終選考はなされていないが、吉田麻也、酒井宏樹、大迫勇也らベテラン勢に、南野拓実、遠藤航、伊藤純也、三苫薫、田中碧、鎌田大地、久保建英らの若手が期待される。
特に個人的に注目したいのが三苫薫(みとまかおる)である。川崎フロンターレから2020東京オリンピックの後にイングランドのチームに移籍。独特のドリブルはディフェンス泣かせであり、今年6月6日のブラジルとの親善試合では唯一目を引いた日本選手であった。カタール大会での活躍を期待する。
先に書いたようにグループリーグを突破するのはハードルが高いが、2位で通過できればベスト16の決勝トーナメントでは、グループFの1位と、まかり間違って1位で通過すればグループFの2位と対戦する。グループFからはベルギー・クロアチアあたりが抜き出るとみられ、グループリーグ突破ができればベスト8も夢ではない。サムライブルーの奮闘に期待したい。

 キリがないのでこの辺で終わります。

以 上