新型コロナ禍での中小企業の生き残り戦略について

豊島区中小企業診断士会
近藤 隆

 

 2020年春から始まった新型コロナによる影響で中小企業は大打撃を受けている。行政からの持続化給付金、家賃補助、雇用調整助成金、3年間無利子の融資などの支援を活用しながら半分以下になった売上の状況で赤字を出しながら事業を継続している。しかし、2020年の年末から第3波が発生し、さらに厳しさが増している。
 帝国データバンクによると、2020年の飲食店事業者の倒産件数が780件となり、過去最多を更新した。まさに先が見えない暴風雨の中でどちらに向かって船を進めるべきか、船長(経営者)は大きな問題を抱えている。
 1年以上まえから経営支援をしていた小売店では、販売促進のため昨年、小規模事業者持続化補助金を申請し採択され補助事業を実施していた。しかし、廃業することを決断した。店舗レイアウトや陳列の改善、看板の設置など積極的に販売促進をしたが、売上改善には至らなかった。低利の借入もして運転資金の調達を行っていたが、先が見えない経営環境下では余裕のあるうちに廃業せざるをえないとの経営判断であった。

 一方、コロナ禍であっても、順調に売上拡大をしている事業者もある。昨年の4月に創業した飲食店である。店舗での売上は他店と同様に厳しい状況であるが、弁当の売上が好調である。弁当は、店頭販売ではなく近隣の病院内で販売している。事前に病院の弁当市場を調査したところ、お手頃の値段ではあるが、味はいまいちであった。そこで、値段は少し高めであるが、味を重視した弁当を開発して販売する事にした。病院従事者は、長時間、現場を離れる事が出来ないため昼食は簡単な食事しかとる事ができない。そのため院内のコンビニなどですませているが、おいしい弁当をたべたいという、病院従事者のニーズを満足できていない状況であった。新規参入ではあったが、当店は、そこのニーズを満足する弁当を提供することによって顧客をつかむことに成功した。
 2020年第三回補正予算にて、中小企業向けの補助金として事業再構築補助金が設立される予定である。総予算は1兆円超を確保される。新型コロナウイルスの完成防止拡大に伴って事業モデルの転換や感染防止に取り組む中小企業で、申請前の直近6カ月前のうち、任意の3カ月の合計売上高が、コロナ以前の同3カ月の合計売上高と比較して10%以上減少していること、事業計画を認定支援機関や金融機関と策定している事が要件となっている。補助額は、事業転換にかかる費用の3分の2で、1社当たり100万円から最高1億円を給付する補助事業である。注目点としては、建物、建物改修費が補助対象経費になっていることである。
 具体的な活用例としては、小売業の場合、ネット販売への事業転換のための店舗改装、新規オンラインサービス導入にかかるシステム構築費用や広告宣伝費用などである。製造業では、事業転換に伴う設備撤去費用や新規設備導入費用、従業員の研修費用などである。
 急激に変化している顧客ニーズに対応するビジネスモデルに転換するための補助金は、資金力の乏しい中小企業にとって、是非、活用したい補助金である。

注:経済産業省の第3次補正予算案の事業概要から引用