#04 有限会社つるや商店 代表取締役 鶴田清司さん

 有限会社つるや商店では、日本酒とワインの専門店である「地方銘酒 つるや」と、ワインに合う料理を提供する居酒屋「ワイン酒場 いちぞう」を経営されています。コロナ禍で飲食店の経営が厳しい状況が続いている中、残念ながら「日本酒ダイニング 吉之助」を2021年9月に閉店されました。一方で、新規事業としてウィズコロナ、アフターコロナに向けた新店舗の開店に取り組まれています。中小企業診断士でもある代表の鶴田清司さんに、お話しをお伺いしました。

ビジネスへの情熱

-これまで酒屋と飲食店2店舗の経営に携わられてこられましたが、ご自身で経営をしようと思ったきっかけを教えてください。

鶴田 学生時代からビジネスをやりたいという気持ちがありました。一度は就職したものの、父親が酒屋を経営していたので二代目として『つるや』を継ぐことにしました。当時、お酒の販売は法律で権利が守られており、変革を行わなくても経営していける酒屋が多かったように思います。やがて規制緩和でスーパーやコンビニでも販売できるようなり、今までのやり方では経営はうまくいかないと考え、他の店との差別化につながる取組みをはじめました。

日本酒専門店としての差別化

 -具体的にはどのようにして差別化をはかったのでしょうか。

鶴田 他の店では扱いが難しい日本酒を中心とした酒蔵と交渉して直接契約を結ぶことに成功しました。昔からの商流で、酒蔵と直接契約できると、近隣エリアは同社に販売を任されます。その結果、同じエリア内では同じ酒造の日本酒を販売できなくなり、参入障壁を築くことができるのです。

-取り扱っている日本酒にも特徴があるのでしょうか。

鶴田 流通量が少ないなど契約が難しい酒蔵と契約することで、他店では取り扱いがない商品をそろえるようにしています。
 酒蔵と直接契約しているため、正規の価格でお客様に珍しいお酒を提供できることも魅力のひとつと考えています。

つるや一押しの日本酒「黒龍 石田屋」

多角化とシナジー

 -その後、日本酒専門の酒屋から事業を広げられます。どのような道筋でしたか。

鶴田 最初に日本酒にあうダイニング『吉之助』を開店させました。酒屋の『つるや』と日本酒ダイニングの『吉之助』は、バスで15分ほどの距離にあるため、互いの店のお客様を紹介しあいシナジー効果を生むことが狙いでした。

-一方で、2店舗目の『いちぞう』はワインの酒場ですね。

鶴田 胃がんを患い、医師の勧めでワインに興味を持ちました。ソムリエの資格を取って本格的にワインについて学び、それまで日本酒専門店として経営していた『つるや』でもワインを取り扱うようになりました。そこで、新たにワイン酒場『いちぞう』をオープンしました。

ワインの提案からワインにあった料理の提供を行う
ワイン酒場「いちぞう」(同社ホームページより)

コロナの先へ

-コロナ禍で飲食店の経営は大変なのではないでしょうか。

鶴田 確かに休業や時短営業の影響はありました。最初に開店した日本酒ダイニング『吉之助』は、一年ほど休業したあと、2021年9月に閉店しました。
 しかし、これからの時代にあった新しい店づくりについてじっくり考える時間が取れたのは良かったと思います。また、コロナ禍で撤退した店舗の跡地を見つけることができました。一流の料理人との出会いもあり、悪いことばかりではなかったと思います。

-新店舗のコンセプトを教えてください。

鶴田 「ウィズコロナ」「アフターコロナ」を意識しています。衛生面で安心して頂けるように券売機を導入して非接触でオーダーが出来る仕組みを導入しました。

-居酒屋で券売システムとはおもしろい仕組みですね。

鶴田 各々が欲しい飲み物を注文できるので、お酒に弱く割り勘負けしてしまう人や、上司がおごらなければいけないといった風習になじめない人にはうけるのではと期待しています。ただ、お酒を飲んだ状態で都度、券売機までチケットを買いに行きたくないという意見もあり吉と出るか凶と出るか楽しみです。

-他にはどのような仕組みがありますか。

鶴田 コロナ禍で旅行に行けないお客様の癒しになればと、巨大なスクリーンをつなげて美しい風景の動画を流し、旅行に来て外の風景を眺めている気分を味わえる工夫もしています。

-差別化やシナジーなど、まさに中小企業診断士として学んだ知識を、ご自身の経営に活かされていますね。補助金の制度も活用されたとお聞きしました。

 鶴田 そうですね。事業再構築補助金や雇用調整助成金、IT導入補助金などを活用しました。
 新店舗は券売機や巨大モニターなど設備にかなり投資しています。こうした思い切った投資ができた一因に、補助金を活用できたことも大きかったと思います。

-補助金で得た資金を次の新事業へ投資され、コロナ禍の厳しい飲食店経営を乗り切ろうとするバイタリティーを感じました。

 鶴田さんは好きな言葉は「転んでもただでは起きぬ」とのことで、ピンチな時ほど物事を前向きにとらえてチャンスに変えてこられたお話しにワクワクしました。
 新店舗がどの様なお店になるのか今からとても楽しみです。貴重なお話しありがとうございました。

[企業情報]

有限会社つるや商店
日本酒とワインの専門店
http://www.kanpai.biz/tsuruya/
〒188-0011東京都西東京市田無町2-13-11
TELL:042-468-17

ワイン酒場 いちぞう
楽しいワインのおもてなし
〒202-0001東京都西東京市ひばりが丘1-3-2-2F
TELL:042-439-8691

(余録)日本酒初心者の筆者にもお勧めを教えて頂きました。「黒龍 吟のとびら」まだ美味しい日本酒をご存じでない方へ新たな世界の扉を開いて欲しいとの願いが込められた大吟醸酒です。

 
最初は甘く感じましたが後味はピリッとした辛味も感じられました。湯葉や茶碗蒸し、鯛のお刺身などにもよく合うそうです。気になった方は、ぜひ一度お試しください。(東山真由子)