#030 ふわふわサーカス 代表 リード たまきさん
ふわふわサーカスでは、幼稚園で流行っている歌やメンバーの子どもが好きなことなど、子どもの興味に関する情報が飛び交います。
0歳からでも楽しめる世界で一番やさしいサーカスを目指しているリードさんにそのきっかけや想いをお聞きする中で、エンターテインメントが持つ次世代への役割が見えてきました。
子育てとの両立が生んだ経営理念
―事業を立ち上げる前は、どのようなことをされていたのでしょうか。
リード 私は、幼い頃から自分の身体一つを使って表現をすることに惹かれていました。
小学生の時に、シルク・ドゥ・ソレイユのアレグリアを見て、「すごい!これこそ身体芸術の極みだ」と思いました。社会人になった時に、 東京でサーカスの演目である空中アクトを習えるということを知って習い事として始めました。
3年後、海外のリゾートホテルで、お昼は空中ブランコのインストラクターをして、夜はサーカスショーに出るというお仕事を始めました。
―そこからどのように事業立ち上げへ繋がるのでしょうか。
リード その後、結婚してオーストラリアに住んでいたのですが、出産を機に日本に戻りました。
そこから2児に恵まれ他の仕事をしていましたが、サーカスへの想いを諦めきれずにいました。ただ、ショーに出演するとなると、練習もリハーサルも本番も、ずっと子どもを預けることになります。夜に預けるのは特にハードルが高いです。
それならば、「子どもと一緒に過ごせる・楽しめるサーカスを作ろう」と立ち上げたのがきっかけです。メンバーも子育て世代の方が多いので、ショーを見にいらしてくださるお子様はもちろん、サーカスのメンバーのお子様もいっしょに楽しめるサーカスにしたいと考えました。
環境にも配慮した安心できる空間
- ホームページを拝見したところ、事業戦略としてやさしいサーカスというのを大事にされていると思ったのですが、いかがでしょうか。
リード 以前、娘とサーカスに行った時に、照明が暗くなりスリル溢れる音楽やピエロを怖がっていたため、一旦外に出ました。
初めて見るサーカスが、もうちょっと親子連れにやさしい環境、例えば柔らかな光とかわいい色合いの中で、カーペットにゴロンとできて、立っても座っても踊っても好きに見ても良い、また、保護者が安心できる安全な空間で、子どもが飽きづらいサーカスを見ることができたら素敵だなと考えました。
- 内容や見た目だけではないのですね。
リード 内容はもちろん、環境もできれば小さな親子連れに優しい空間にしたいと考えています。授乳室があり、ステージと客先に段差がないところなど。会場選びの時に可能な限りは考えていて、最初の公演も畳スタジオという床がフロア1面の畳になっていて子どもにやさしい会場を選びました。
予算的に難しいところもいっぱいあるのですが、世界で一番やさしいサーカスだったらどうやるか、という基準で常に考えています。
- 0歳から楽しめるという表現がわかりやすく、すごくいいなと思いました。
リード 0歳から3歳ぐらいまでが楽しめるエンターテインメントが少ないというのが、子育てをしていて感じたことです。
特に1歳ぐらいになって動きだすと一緒に楽しめる場所が減る印象を受けました。
イヤイヤ期にも入るし、親も連れて行くのが大変です。ベビーカーでお出かけをすると駅のエレベーターの位置を把握して、ない場合はベビーカーと荷物と赤ちゃんを担がなければならず、出産前はお出かけ大好きだった方でも難しい場面がたくさんあると思います。そんな大変な思いをしてお出かけした先には、親子で楽しめる場所が広がっていたらいいなと思っています。
繋がりが深まる参加型サーカス
- 現在の事業の中心はどういったものでしょうか。
リード 幼稚園・小学校での公演や地域イベント・商業イベントの中での出し物というのが多いですね。小さな移動式サービスなので、屋内外どちらでも公演可能です。
- サーカスの中身はどのように決まるのでしょうか。
リード 基本的には新作のショーと既存のショーがあって、ご依頼に沿って書き換えています。例えば40分中の10分間のパート、起承転結の転のところですね。
幼稚園の場合、園児のみなさんに身近な園長先生や担任の先生にご登場頂くことが多いです。例えば音楽がお得意な先生には演奏でトラブルを解決してくれるヒーローとして登場をお願いします。体育会系の園長先生は登り棒で一番上まで登ってくださいました。普段お世話になっている先生のご活躍に園児のみなさんからは歓声が上がり、自然と手を叩いて応援してくれます。
- 普段とは違う顔が見えたりするのは、先生への親近感が生まれて、先生と子どもたちのコミュニケーション向上にも繋がりそうですね。
リード 他にも子どもが飽きないよう、リトミックを取り入れて、布を使って音楽に合わせてボールを浮かせたり、みんなで一緒に風船を飛ばしたり、子どもが飽きないようにどこかで参加できるパートがあるように考えています。
先日、小学校公演向けに『ユニコーンと願いごとの星』という新作を作りました。生徒500名1人1人が折り紙で星を折り、その中に願い事を書いて頂きました。その500個の星型の折り紙を小学校の保護者会のみなさんと繋げていきます。本番では、女神役の空中パフォーマーさんが、8メートル上空まで背負ってのぼり、「みんなの願い事が叶いますように」と言って魔法をかけると、保護者のみなさんが膨らませてくださった500個のバルーンが一斉に落ちてくるという演出をしました。小学校・保護者のみなさん、生徒のご協力あってのことで、すごく素敵な光景でした。
- 子ども同士や保護者と子どもの関係性にも良い影響が生まれそうですね。これらは、サービスとしての付加価値にもなりそうです。
リード 最近は、ファミリー層に喜んでいただきたい企業向けにパッケージショーも始めています。サーカスとミュージカル俳優さんの歌唱とダンスによる10分間のミニショーと、サーカス体験のパッケージで、こちらは依頼してくださる方にお手間なくできます。
いつでも行けるみんなの居場所
- 事業を通じてどのような理想を目指しているのでしょうか。
リード 子育て世代の私たちから、やさしい世界がどんどん広がって、今の子どもたちが大人になった時にもっと子育てがしやすくなっているといいな、そんな世界に繋げていけたら、という想いが強いです。
- 子どもと一緒に楽しめる、繋がりが深まるような場所が増えていくのは素晴らしいですね。今後の展望はどのようにお考えでしょうか。
リード 一番大きなところではキッズパークのある常設シアターを作りたいです。テーマパークのように、いつでもふわふわサーカスの公演を見ることができるシアターがあり、ショーの登場キャラクターをイメージしたボールプールがあったり、雲の上の世界にメリーゴーランドがあったりします。
私は、非日常が好きで夢見がちではありますが、そういう大きな夢があるからこそ、原動力になると感じています。
その過程として、異文化の体験としての英語公演や水族館のような意外性のあるところでやりたいです。
立ち上げ当初小さかった、ふわふわサーカスメンバーのお子さんたちが今では、小学生や高校生になっています。当時小学生で、親子でサーカスに出演した男の子は16歳になり、これからアクロバットやダンスの強みを活かして素敵なパフォーマーになると思います。
みんな大きくなっていく中で、誰かふわふわサーカスの世界が好きな子がいたら、アルバイトなどどんな形でも一緒に働いてくれたらと夢見ています。
- 子どものときに体験した思い出を引き継いでやさしいサーカスを盛り上げていくのは素敵ですね。
リード すごく嬉しいのが、公演をするとメンバーの親御さんや祖父母のみなさまもお見えになります。みんなが集まり楽しめる、また誇らしく感じる場所になるよう、夢見る世界を広げて、「ようこそ!」と言える場所をつくりたいです。
※取材内容は2024年3月時点のものです。
[企業情報] ふわふわサーカス こどもといっしょ |
(余録)
エンターテインメントは、心を豊かにし、活力を与えてくれるものであると考えています。
そして、エンターテインメントを通して親子や友達同士、先生や生徒といった人間関係の構築にも繋がっていきます。
ふわふわサーカスさんは、明確なテーマを持ってエンターテインメントの魅力を体現されていました。ふわふわサーカスというみんなの家を通して、やさしい世界がどのように広がっていくのか今後の展開が楽しみです。
(野中秀彦)