訪日外国人増加に伴うホテル市場への影響

国際部 宮下

 増え続ける外国人観光客。2003年には約521万人だった訪日外国人数が、今年は2000万人を上回る勢いだ。東京五輪を4年後に控え、これからもさらに外国人観光客の影響が大きいものとなるホテル需要について考察する。

1:今後の成長戦略として期待される「外国人観光客ブーム」

 訪日外国人の増加によって、観光地に向かう外人観光客の宿泊のホテル需要増という恩恵が期待されている。下図によると、最近の増加ペースは、前年比+30~+50%であることがわかる。
     
外人観光客の着実な増加は、円安による日本への旅行の割高感の解消だけが要因では無い。政府が地道に進めてきた、「VISA発給条件緩和、オープン・スカイ政策、LCCの推進」が寄与している。それに加えて中国、台湾などアジア諸国の経済成長による旅行ブームの盛り上がりという恩恵もある。

これらは短期的に終わってしまうものではなく、2015年以降も政府や民間が交通宿泊インフラの整備改善を進める計画が目白押しであり、2020年の東京オリンピックへ向けて、さらなる外人観光客数の増加が期待できる。


2:2020年東京オリンピック、ホテルは足りるか?

 東京では、取り壊されるホテルの客室が、再稼働時に減少しているケースが散見される。つまり、客室が減少させ内容を高級化して、ラグジュアリー・ホテルとして再稼働している。高級なラグジュアリー・ホテルが不足している現状と、円安になって外人観光客の増加が確実視される中、外資系ラグジュアリー・ホテルは着実に増加中だ。

 その先にはオリンピックが2020年に開催される。その時、ホテルは足りるのか?
日本政策投資銀行が2014年6月に公表した資料「東京オリンピック期間中と期間後の全国のホテル需給環境を考える」によれば、「東京での観戦目的の訪日外国人数は20~40万人」と予測されている。政府が作成したIOC向けの誘致レポートには、50km圏内(グレイター東京)に14万室あるので、宿泊キャパシティは問題が無い、と書かれている。

 下図の赤丸が、東京の50km圏内だが、2020年のオリンピックは、コンパクト・オリンピック(=競技は基本都心部に集中)だから、近いところに宿泊希望が殺到しそうだ。
          

 政府がIOCに提出した「50km圏内14万室」の内、35km以遠はオリンピック需要の恩恵が期待以下になる可能性がある。
 一方で、他都市での事例に見られるように期間中は高級ホテルを中心に宿泊料金は大幅に上昇すると考えられる。ホテル関係者へのヒアリングでも、需要に応じた価格設定の期待がある一方、国際観光ホテル整備法で定めることとなっている「定価」を上回ることへの抵抗感や、日本人の特質もあり、ホテルが絶対的に不足していたアテネや、需要に応じた価格設定が一般的な北京等とは異なり、オリンピック開催期間中の東京のホテル客室料はロンドンと同程度の1.5~2倍程度の上昇と予測する声が多い。前出:「東京オリンピック期間中と期間後の全国のホテル需給環境を考える」

 観光客による消費額は増加する見込みはあるが、実際にロンドンオリンピック期間中の訪英外国人数は、観光シーズンの夏季であるにもかかわらず、混雑を嫌い開催地に行かない人もあり、逆に減少したというのは記憶に新しいところであるため、オリンピックによるホテル不足の可能性は低いのかもしれない。

以上

(2016年6月)



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