~日本の古民家に興味を示す外国人~

国際部 東 新

 私が住んでいる川崎市北部に日本各地から古民家を集めた「川崎市立日本民家園」がある。最近ここの園長さんにお会いする機会があったので外国人の来園について話を伺った。
「日本民家園」は昭和42年に開園した野外博物館で、主に江戸時代の古民家を日本各地から移築復元して、現在は25棟の古民家を展示している。展示されている古民家等は全て文化財となっており、国指定重要文化財(7件)、同重要有形民俗文化財(1件)、神奈川県指定重要文化財(10件)、川崎市指定重要歴史記念物(7件)となっている。その維持には多大な努力をされているそうであるが、それを支えているのが260名ほどのボランティアと聞いて驚いた。ボランティは当初古民家を虫害や湿気から守る為の「火焚き」(囲炉裏で火を焚いて燻蒸)をする活動から始まったが、今は園内の清掃やガイドも行っている。ボランティアの中には外国人向けのガイドをする方もおり、外国人向けガイドがいる日は待機している古民家の場所が入り口に掲示されている。

          

 「日本民家園」の入園者数は平成26年度に過去最高の12万4千人を記録したとのことで、徐々に増加してきたそうだ。その内の外国人来園者は5千人強であったとのことであるが、個人ベースで訪れる人が多く、ツアーの団体見学は殆んどない。本当に興味を持った人たちが訪れているということであろう。

外国人向けには、日本民家園のHPにかなり充実した内容の英文サイトがある。また、入り口には外国語のパンフレットが9カ国揃えてあった。中にはA4用紙1枚に文章だけのものも見られるが、訪れた外国人に少しでも理解して欲しいと言う気持ちが強く現れている。「日本民家園」では積極的に対外的なPRはしていないそうで、口コミによる来園者が多いと考えられるが、外国人がよく利用する日本の観光地を紹介する代表的なインターネットサイト「japan-guide.com」を見ると、「日本民家園」は川崎市の3つのお勧めスポットの一つとして紹介されている。‘japan-guide’と‘user’の「日本民家園」に対する評価点は高く、いずれも2番目になっており、来園者が高く評価する文化施設と言える。因みに一番評価の高いスポットは、「日本民家園」のすぐ近くにある「藤子・F・不二雄ミュージアム」で3番目は川崎大師となっているが、世界的に有名なキャラクターを展示している「藤子・F・不二雄ミュージアム」が一番になるのは当然の結果と言える。

            

 今後、日本に来る外国人は、爆買いツアーは別として、日本人の実際の生活や文化に触れようとする観光客が増えることが予想されるが、それ等をよく理解してもらうためには外国人向けのパンフレットやガイドをもっと充実させる必要がある。「日本民家園」の使命は日本の文化を伝えるソーシャル・ビジネスの一つと言えるが、訪日外国人向け“インバウンド・ソーシャル・ビジネス”と呼ぶことも出来るのではないだろうか。2020年東京オリンピックに向けて、「日本民家園」に限らずこの様な文化施設の果す役割は大きく重要であるが、その為には、ボランティアの力を活用した“インバウンド・ソーシャル・ビジネス”を活発化させることが必要となってくるであろう。

 皆さんもこのようなボランティア活動に参加されては如何でしょうか。

注釈)
1. 川市立日本民家園:所在地は川崎市多摩区枡形7-1-1。小田急線「向ヶ丘遊園駅」南口から徒歩約13分。URLはhttp://www.nihonminkaen.jp/。
2. Japan-guide.comのURL::http://www.japan-guide.com/

以上

(2015年12月)


戻る