インバウンドに向けたDMO

国際部  宮下


インバウンドによる恩恵を、大都市への集中から地方都市へ波及に向けてどのように図るかが地方創生の観点において課題となっている。
その中で、DMOが地域が一体となった観光地域作りの舵取り役の機能を果たす主体として期待されている。政府は「明日の日本を支える観光ビジョン」において、「2020年までに、世界標準のDMOを全国で100形成する」ことをKPIとして掲げており、既に全国で140以上の団体がDMO候補として登録され、一部では具体的な成果が出つつある。

1:DMOの意義
DMO とは Destination Marketing/Management Organizationの略称であり、地域が主体となって情報発信・プロモーション、効果的なマーケティング、戦略策定等について推進する観光振興組織のことである。特に、民間による推進への期待が大きい。理由は、政府や行政によるインバウンド観光の目標値は数のみが注目されがちだが、実際には多様な参考指標があり、量とともに質への関心が高い。また、インバウンド観光という新領域において、地域のビジネスとして発展する持続可能は観光産業を営むためには、日々変化する観光客のニーズを捉え、グローバルな競争環境下で勝ち残るマーケティング戦略や観光品質の向上が必要であるからである。そのためには、既存の観光協会や商工会を含有し、行政と連携しつつ地域を総合的に取り纏め、新たな市場を創造することのできる地域マネジメント組織、日本型DMOがインバウンド観光の推進に取組むことが有効である。

2:日本版DMOの事例(せとうちDMO)
瀬戸内を囲む7県が平成25年に立上げた「瀬戸内ブランド推進連合」を改組、発展させ平成28年に設立。①一社)せとうち観光推進機構(マーケティング、プロモーション等を担当)と、②株)瀬戸内ブランドコーポレーション(ファンドを通じた資金支援等を担当)で構成し、「顧客(需要)の創造」と「地域の魅力(商品・サービス)の向上」を一体的に推進できる体制を築いている。


          出所:政府・未来投資会議資料「せとうちDMOの目指すもの」


       出所(せとうちDMOサイト):http://setouchitourism.or.jp/ja/setouchidmo/

 推進の中で、以下のような取組みが生まれ、せとうちブランドの確立による地方創生(地域再生と成長循環)の実現に繋がっている。
・「せとうち観光活性化ファンド」によるクルーズ船への資金拠出
・瀬戸内各県に居住するライターによる地元目線でのSNS等への発信メディア
「瀬戸内ファインダー」の運営
・特産品などの価値向上のための「瀬戸内ブランド登録制度」の構築

3:今後の課題
日本の観光地域づくりの取組は、これまで地方行政が主導してきており、地域の観光協会は国内プロモーションやイベント運営等、一部の業務を担うという色彩が強かったが、今後は日本版 DMO が観光地域づくりを主導していくことが期待される。但し、そのためには、日本版 DMO と地方行政とがそれぞれどの様な役割を担っていくかについて、地域の関係者で議論を重ねた上で今後の方向性を共有し明確にしていく必要がある。


以上

(2017年11月)



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