

ミャンマーへの投資
国際部 野村 純一
グローバル市場の中でも将来性があると考えられているミャンマー国への投資について、日本企業が関心を持つと思われる事項をご紹介します。
1. ミャンマー国の概要《参考:ジェトロホームページ》
① 基本情報
・国名: ミャンマー連邦共和国
・面積: 67万6,578平方キロメートル(日本の1.8倍)
・人口: 5,148万人
・首都: ネーピードー
・言語: ミャンマー語、ほか
・宗教: 仏教(89%)、ほか
② 政治状況
・政体: 共和制・大統領制
・元首: ティン・チョー大統領
・近況: 2015年11月の総選挙で、アウンサンスーチー氏が率いる国民民主連盟
(NLD)による新政権となり、様々な改革等が進められている。
③ 経済状況
・規模: 670億ドル(名目GDP)、292ドル(一人当たり名目GDP)
・成長: 7.0%(実質GDP成長率)
・輸出: 126億ドル(総額)、7.8億ドル(対日)
・輸入: 245億ドル(総額)、11.7億ドル(対日)
・投資: 68億ドル(直接受入)
2. ミャンマー国の経済政策
① 経済基本方針(2016年7月29日)《参考:日経産業新聞》
・透明性の高い財政構築
・国有企業の民営化及び中小企業の育成
・教育・職業訓練システムの強化
・インフラ整備と公共システムの電子化
・国内外のミャンマー人の雇用創出
・農業・工業の均衡した発展、輸出産業の振興
・外資誘致法制と知財法制の整備
・その他5項目
② ミャンマー投資法
・(旧来の外国投資法から)内外を統合した新投資法が2016年10月に成立した。
・2017年2月~4月に細則が順次制定された。
・2017年内に新会社法が制定される予定である。
③ ティラワ経済特別区(SEZ)
・ミャンマー初の経済特別区であり、ヤンゴンから南東の20kmに位置する。
・開発はミャンマー・ジャパン・ティラワ・デベロップメント社であり、出資比率
は「ミャンマー側51%:日本側49%」である。
・総開発面積は2,400ha、その内ゾーンAの400haが開発済み・入居中である。
3. ミャンマー投資法《参考:ミャンマー投資セミナー資料、JICA資料》
外国(日本等)からの投資に関する基本的な規制(ルール)が新しくなった。
その背景や考え方の理解はミャンマーに進出する企業にとって重要である。
① ミャンマー投資法の特徴
・ミャンマー国内企業と外国企業の投資を統括して規制する法律とした。
・投資については原則自由化された(戦略事業・巨額投資・環境保護等を除く)
・Endorsement 手続きの新設で税務恩典と土地長期賃借の範囲が拡大した。
・MIC認可の有無に関わらず、外国投資家の海外送金が可能と明記された。
・投資家保護(内国民待遇・最恵国待遇・紛争解決等の規定)を進めた。
② 業種規制
・MIC認可を要する事業(ミャンマー国にとり戦略的に重要な事業/投資、等)
・禁止される投資(環境や生態系に重大な影響を与える事業、等)
・制限がある投資活動(合弁投資の形のみ認められる事業、等)
・議会承認が必要な投資活動(国民の安全や社会的利益に影響を及ぼす事業)
③ 税務恩典・土地長期賃借
・MIC認可でない企業も新設のEndorsement手続きでメリットを享受できる。
・法人税免税に関するゾーニング制度により、地域別に投資促進を図る。
④ 雇用制度
・Senior Manager、Technical/Operational Expert、Advisor の国籍条件が廃止に
なったが、非熟練労働者がミャンマー国民に限ることは変わらない。
⑤ 産業育成
・農業、林業、畜産業
・製造業、産業地帯、新都市エリア
・道路・橋梁・鉄道・港湾・空港の建設と整備、物流
・電力、通信、教育、医療、観光業
4. ティラワ経済特別区《参考:ミャンマー投資セミナー資料》
経済政策や投資規制の緩和に先立って、経済特別区の取組が成果を上げつつあり、日本が協力・支援したティラワ経済特別区の状況を紹介する。
① 2013年に着手されたゾーンAについては、第一期が2015年8月に/第二期が2016年7月に、
それぞれ完工し、入居企業の操業が進んでいる。
② ゾーンAの販売状況は、契約済79社、内着工済66社、内稼働済29社、である。
③ 日本企業の入居が進んでいる要因には、電力・上下水道・通信・廃棄物処理・税関・レンタル工場・
商業施設等のインフラが整備されていること、SEZ法適用によって行政手続きが簡素なこと、等が
挙げられる。
④ 当初に想定されていた「ミャンマーからアジア諸国への輸出を狙いとした入居」と並行して、「ミャンマー
国内市場の開拓を狙いとした入居」も多くある。
⑤ ゾーンBエリアについても、2017年2月に着工し、2018年半ばには完工・入居をする予定で進められて
いる。
5. まとめ
ミャンマーは豊かな資源を持ち、経済と国の発展を目指して、年々変貌を遂げつつある国です。非常に親日的であり、日本企業が進出する対象国として有望と考えられます。
一方で、都市部と農村部・辺境部の格差は大きく、国全体の底上げ的な発展には相当な期間を要すると思われます。
筆者自身が2013年にティラワ経済特別区を訪れた時には原野であったゾーンAが、2016年に再訪して見事に完成・入居していたのは、この国の将来性と日本との協力が重要なものと感じられ、印象的でした。
以上
(2017年6月)