中国インターネット市場の発展と展望

国際部 宮下

 中国のCNNIC(中国ネットワークインフォメーションセンター)によれば、2015年6月までの中国本土のインターネット利用者数が、6億6800万人(普及率:48.8%)に達したと発表しました。昨年同時期に比べて、約3600万人増加しました。
しかしながら、中国の総人口と比較すると、インターネット利用者数はいまだ50%に満たないという状況です。 利用者については、約7割が都市部で3割が農村部となります。

 

まだ利用者が半数と言いながらも、桁外れの利用者数であることは間違いありません。こういった市場の拡大に伴い、インターネットビジネスを行っている中国IT企業でも世界的に巨大な企業が生まれています。2014年9月にアリババがニューヨーク証券取引所に上場し、2兆7千億円を調達したことは記憶に新しいですが、このアリババを含む、BATと呼ばれる、(Baidu(百度/バイドゥ)、Alibaba(阿里巴巴/アリババ)、Tencent(騰訊/テンセント)3社は常に注目を集めています。

バイドゥは、インターネット検索大手で中国版のGoogleとして知られています。アリババは中国最大のオンラインショッピングサイト「淘宝網(タオバオ)」、「天猫(Tmall)」を運営しており、テンセントは、インスタントメッセンジャーの「QQ」やLINEのようなコミュニケーションツールである、「微信(WeChat)」を提供しています。我々が日本国内で、検索にGoogleやYahooを使い、Amazonや楽天で買い物をして、LINEやFacebookを楽しんでいる状況に近いという感じかと思われます。これらのサービスの規模は拡大をしており、アリババの2015年の11月11日の「光棍節(シングルズデー)」のバーゲンセールの取引額は一日で約1兆7620億円(前年比60%増)を売上げ、テンセントの「微信(WeChat)」は中国系の住民が多いアジア地区へも浸透して行く中で、世界で約13億人のユーザーが利用するほどに成長しています。

 一方、中国のインターネットは我々からすると、特殊な面があると感じざるを得ません。中国は2014年末に、Googleへの接続を遮断しており、Googleの各種サービスが基本的に使えません。また、FacebookやTwitter、YouTubeも使用できない状況です。これは、中国のネット管理システムの「金盾」や国外サイト対策を行っている「GFW(グレートファイアウォール)」によるものと言われています。
このような中で、中国国内のインターネットが貧しくなっていく可能性もありながら、同様の中国産のサービスを代替とし、それらは多くのユーザーに欠かせないものとなっています。大多数の国民は海外のサービスを利用できない多少の不便さは感じながらも、国内で閉じたインターネット環境の中でオンラインショッピングやコミュニケーションを十分謳歌していると言えるかと思います。

 今後の重点領域として、アリババ、テンセントは金融事業への進出を掲げて力を入れています。テンセントにおいては「微信(WeChat)」をプラットフォームとして、タクシー代、公共料金の支払、コンビニでの買い物の決済といったサービスの展開や、無店舗型の銀行もスタートさせています。日本の流通企業における決済サービスでの導入例も出始めており、圧倒的なユーザー数を背景として、今後は海外の事業領域への展開をどれ程広げられるかに注目が集まります。

以上

(2016年1月)



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