世界遺産について

国際部  中村 寛



 今回は世界遺産について軽く調べてみた。世界遺産には、文化遺産、自然遺産、複合遺産がある。文化遺産とは顕著な普遍的価値を有する記念物、建造物群、遺跡、文化的景観など、自然遺産とは顕著な普遍的価値を有する地形や地質、生態系、絶滅のおそれのある動植物の生息・生育地など、複合遺産とは文化遺産と自然遺産の両方の価値を兼ね備えているもので、1972年の第17回UNESCO総会で採択された世界遺産条約で定められた。
 2016年12月現在、条約締約国は191ヵ国、世界遺産は全部で1,052件、うち文化遺産が814件、自然遺産が203件、複合遺産が35件である。日本にはこのうち文化遺産が16件、自然遺産が4件あったが、2017年に沖ノ島が文化遺産に登録され、現在全部で21件になっている。



世界遺産として登録されるには、まず条約締約国が国内の候補物件を暫定リストに記載してUNESCOに提出する。そしてその中から条件が整ったものを世界遺産委員会に推薦し、専門機関による調査を経て年1回開かれる世界遺産委員会で承認を受ける必要がある。登録基準は、「人間の創造的才能を表す傑作」、「歴史上の重要な段階を物語る建築物、その集合体、科学技術の集合体、あるいは景観を代表する顕著な見本」、「最上級の自然現象、又は、類まれな自然美・美的価値を有する地域を包含」など全部で10の要件のうちいずれか1つ以上に合致し、真実性(オーセンティシティ)や完全性(インテグリティ)の条件を満たし、締約国の国内法によって適切な保護管理体制がとられていることとされている。
世界遺産の目的は、過去から現在へと引き継がれてきたかけがえのない自然や文化財を、人類共有の財産として未来へ引き継いでいくことである。世界遺産を持つ地域では自然や文化財の保全に注力されていることであろう。一方で、観光客誘致が世界遺産登録の目的になっているように感じることもある。たしかに観光客が増えれば地域の経済が活性化し、それがひいては世界遺産の保全費用の足しになるということもあるだろう。だが、観光客が増えることで、環境が壊されるということもありうる。その辺のマネジメントは重要である。
私が実際に訪れたり見たりしたことのある日本の世界遺産は8つある。その中で印象的だったのは、平泉の中尊寺、姫路城、厳島神社だ。中尊寺金色堂の金、姫路城の白、厳島神社の赤と、それぞれ色のイメージが強い。それぞれが我々を圧倒する歴史のエネルギーを持っており、寺社仏閣ではその荘厳な空気によって身が清まる思いがした。私は世界遺産マニアではないが、小笠原諸島と沖ノ島には可能であれば行ってみたいと思う。
海外の世界遺産では、ニューヨークの自由の女神像をワールドトレードセンタービル2の80何階から見たことがある。この像は米国の独立100年を記念してフランスから贈られたことは皆さんもご存じのことと思う。ちなみにブラジルのリオ・デ・ジャネイロのキリスト像、「リオ・デ・ジャネイロ:山と海の間のカリオカの景観」という文化遺産の中に含まれているが、この像について、現地の観光タクシーの運転手が「ブラジル独立100年の年にフランスから贈られものだ」と説明していた。
現在日本の暫定リストに記載されているものは8件ある。このうち現在は「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」が申請中であるが、2018年は新たに登録されるものがあるだろうか。楽しみである。




以上

(2017年12月)



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