売上高の因数分解
城西支部 近藤 隆
事業計画作成において、具体的なビジネスモデルを示し、事業の収益性や成長の潜在性を理解してもらうため、売上高の因数分解をします。
売上高の因数分解とは、売上高を構成する要因を分析して、それぞれの要因が売上にどのような影響を与えているかを明確にすることです。これにより、収益を上げる要因を可視化し、具体的な経営戦略の立案に繋げていきます。
売上高の因数分解としては、以下のような公式があります。
①飲食業、理美容業などのサービス業
客単価×席数×回転数×稼働日数
②部品加工業などの製造業
加工単価×設備の生産能力個数×設備数×稼働日
③飲食業、小売業、サービス業
(既存顧客+新規顧客―流出顧客)×(購買頻度×購買点数×1回あたりの単価)
④競合他社との市場シェアの影響の大きい業種
売上 = ターゲット市場規模× 自社のシェア
顧客数は、統計的手法や時系列分析など過去のデータや顧客動向などを考慮して予測します。客単価は、市場単価や原価を基に予測します。製造業の売上高は、材料の調達や生産スケジュールが売上に影響を与えるため、生産計画に基づいて製品の数量を予測します。
時間や費用の問題で、物事の大まかな数値を掴みたい場合は、直感的に推定するフェルミ推定をします。複雑なモデルや詳細なデータの必要はなく、おおよその売上を見積もるのに役立ちます。
①市場の規模など、推定したい数値を具体的に指定
②既知の情報や既存のデータを使って推定
③問題に関連した関係やパターンを把握
④推定したい数値を求める
⑤推定結果の精度を評価
⑥他のデータや経験と照らし合わせ、合理的であるかを確認
フェルミ推定は近似手法であるため、その精度には限界がありますが、初期段階のアイデアの検討やシンプルな予測の目安として役立ちます。
【フェルミ推定の事例】
「日本全国で飼育されている犬は何匹いるか」
【前提】
・日本の人口を1億2000万人
・20人に1人が犬を飼っていると仮定
・飼い主一人あたり一匹飼われていると仮定
■1億2000×0.05×1=600万匹
・ペットショップにいる犬の計算を加える
・犬の寿命10年として1年間当たり1割の犬がペットショップから供給されると仮定すると、以下のような値が算出されます。
■600万匹(市場に必要な犬の数)×0.1(回転率)=60万匹(ペットショップにいる犬の数)
【予測】
日本にいる犬の数は、600万+60万=660万匹 です。
【評価】
一般社団法人ペットフード協会による2022年の犬の飼育数は、705万匹