販路拡大の突破口に!「協働・コラボレーション」のポイント

城西支部 池田 明広

 皆さんは協働・コラボレーションと聞いて、どんなことをイメージされますか? ミュージシャン、アーティストの合作やキャラクター商品など、現在では様々な分野でコラボレーションという言葉が使われていますが、「中小企業にはあまり関係ない」と感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
 協働・コラボレーションは、一言で言えば「専門性を持ち寄り、相乗効果を狙う活動」であり、核となる能力・強みを生かして販路拡大を狙う中小企業にとって、取組む価値のあるものです。
 中小消費財(BtoC)メーカーの企画部門在籍時に多くの社外協働案件に関わった筆者が、取組を考える・進める上で重要と考えるポイントをご説明します。

◆協働を機能させる3要素

 協働をスムーズに進めるための要素は3つあります。①双方の明確な目標、②異なる強み・専門性、③双方の主体性・意欲、です。目標の認識にずれがあると協働がスムーズにいきづらいことは言うまでもありませんが、異なる強み・専門性の組み合わせについては当然のことのようで、現実には近い強みを持つ者同士で組んでしまう事例も見受けられます。
 例えば、ハンバーガーショップとカフェが協働でサンドイッチを開発し、同時に販売した事例が以前にありました。「カジュアルな洋風の飲食、リラックスできる時間・空間の提供」という面でそもそも近い強みをもつもの同士の組み合わせです。話題性で売上が若干あがりましたが、コラボレーションの効果が十分発揮されたと言うには難しい結果でした。
 また、協働への意欲が片方にしかない、片方が指示を出すばかりといった状況も、質の高い成果が生まれにくいことが想像できるかと思います。
 コラボレーション・協働=Collaborationとは、単に「一緒にやること=共同」ではなく、「Co=協力」して、「Labor=働く」ことであり、前述した3要素をふまえて取組の枠組みをつくることが非常に重要です。

◆足りない専門能力を外部に求め、「得意」に注力

 中小企業で協働・コラボレーションが有効な取組となりうるのはなぜでしょう。それは、「社内資源が限られている」からです。
 私が以前勤務した会社は、非常に高い技術で製品を作る人材と能力をもつ一方、新たな顧客層獲得のための製品開発や魅力の伝達に苦心していました。その状況を受け、消費者の声をつかむ力と伝達力・販売力をもつ通販企業との協働を行ったところ、新たな顧客層に訴え得る製品の開発および売上の拡大に成功しました。不足する専門能力を自らで全て対応するのではなく、外部との協働で補完し、自らは強みである製造・生産に特化することで新たな成果を生み出したのです。

◆硬直化しがちな発想に、新たな風を

 また、「社内だけで考える発想は硬直化しがちなこと」も協働が有効となる背景の一つです。社長・部長が長期にわたってリーダーを務めることも多い中小企業では、会議メンバーが固定化し、経験の蓄積や安定感の裏返しに、新しい考え方が出づらくなる傾向があります。外部の考えや意見を入れることで社内を活性化し、「新たな発想が生まれやすくなる状況をつくる」ことは、意識して進める価値のあることです。

 

◆相互に顧客を誘導

 協働で得られる効果としては、まず「相互の顧客を誘導しあう」ことがあげられます。漢方関連の製品を扱う会社がエステの事業者と協働し、サンプル提供や講座・セミナー等のイベントを協働で実施した事例がありました。「小売業とサービス業」「漢方とアロマ」という異なる強み・専門性を持ちよったことで、お互いに通常の活動ではアプローチできない新規顧客に接触する機会となりました。冒頭にお話しした飲食業同士の事例と比べ、強みや顧客層の重なりが少ないことがおわかりいただけるかと思います。

◆確度の高い販売を獲得

 先にお話しした製造業と小売業の協働の場合、「成果(売上)の確度向上」という効果もあります。双方の主体的取組と十分な情報交換を通じ、小売側は自身の意図が入った商品とその安定的な供給を得ることができ、一方製造側は製品の確実な販売先を確保しつつ、生産をスムーズにする需要情報を得られていると言えるでしょう。

◆取組を進める際のポイント

最後に協働・コラボレーションを進める際のポイントをまとめます。

  • 協働相手の探索
    不足している専門性を明確にした上で、それを補う企業や機関を探します。インターネットでのキーワード検索、幹部・同僚や取引先のネットワーク等が活用できます。独自に見つけることが難しい場合、中小企業支援機関など公的機関のマッチングサービスを利用したり、異業種交流会などに参加したりする方法もあります。
  • 双方の意欲・主体性の確認
    担当者間だけでなく、幹部の間でも要所で面談の場を持ち、双方の意欲や取組への温度感、希望スケジュールを確認しながら進めることが非常に重要です。事業や組織が違えば、考える優先度やスピード感に差が出る可能性は常にあります。片方だけがやる気で「労多くして実り少なし」ということにならないよう留意することが必要です。

  • 労力・成果のバランスを考えた投下資源調整
    協働を行う際には、双方の目標がずれていかないよう確認したり、それぞれの強みを生かした役割・費用の分担を固めたり、お互いのすりあわせに労力を要するので、それに見合う成果が得られるかを常に意識することが必要です。もちろん全てがスムーズに進むわけではなく我慢が必要な場面も出てきますが、プロジェクト進行の確度を見極めながら投下する人手や費用を調整していくことが必要です。


◆まとめ: 取組を突破口に

 協働・コラボレーションは、組織に新しい風を吹き込み、販路拡大の突破口になる可能性を持った取組です。事業に停滞を感じることがあれば、対応策の一つとして検討されてみてはいかがでしょうか。