「エシカル消費」を意識していますか

城西支部 岡 栄一

〇「エシカル消費」とは

 皆さんは「エシカル消費」という言葉を聞いたことがありますか。直訳すると「倫理的な消費」という意味で、人や地球環境、社会に配慮した消費やサービスを指します。
消費者庁では2015年から2年間「倫理的消費」調査研究会を開催し、議論を行いました。そして倫理的消費は「あなたの消費が世界の未来を変える」という大きな可能性を秘めているという意識のもと、広く国民間での理解とその先の行動を呼び掛けています。
 この考え方はSDGs(持続可能な開発目標)の17ある目標の内、持続可能な方法で生産し、責任をもって消費することを求める「目標12:つくる責任 つかう責任」と同義です。
 この「エシカル消費」全体に対する認知度、共感度、実践意識について、また、業界別の取り組みに対する消費者意識の傾向と期待値について、株式会社電通が前回調査(2020年)に続き2022年に全国10~70代の男女計2500名を対象に調査を実施しました。その結果、「エシカル消費」の“意味まで知っている”人は6.9%(前回5.7%)、“名前は知っている/聞いたことがある”人は34.2%(前回18.3%)、“全く知らない”人は58.8%(前回76.0%)であり、“名前は知っている/聞いたことがある”人の割合は増えたものの、“意味まで知っている”人の割合は伸び悩んでいました。また、業界別のエシカル消費実施傾向では「食品」「日用品」「家電」などの消費財が増加し、「自動車」「エネルギー」「住宅」などの耐久財は減少傾向にありました。
これらから見ると「エシカル消費」の認知度は徐々に高まっているものの、まだまだ理解浸透には課題がある状況といえます。

〇社会的な課題の解決に向けて

 コロナ禍による影響はあるものの、今の世の中は安くてよいものが簡単に手に入り、便利になりました。しかし、その裏では以下の例示のようなたくさんの問題が存在しています。

 ◇開発途上国の劣悪な労働環境
  ・2億人を超える失業者(ILO調べ)
  ・世界人口の約半数は1日2ドル以下の低賃金(ILO調べ)
  ・世界の子どもの10人に1人は、満足に教育を受けることもできずに仕事に従事

 ◇環境破壊
  ・大気汚染、水質汚濁、土壌汚染、海洋汚染、地盤沈下、騒音、振動、悪臭
  ・自然生態系、自然景観、歴史的/文化的遺産等の破壊

 「倫理的な消費」とは、自分の損得だけを考えるのではなく、環境や社会、人などに配慮されたものを選ぶなど、社会的な課題の解決のつながるような消費をすることです。
消費者である私たち一人ひとりが「エシカル消費」を実践すれば、製品やサービスを提供する側もエシカルな観点で行動するようになり、未来をより良いものへ変えていくことができます。

〇消費者として:あなたの消費が世界の未来を変える

「エシカル消費」は難しいものではなく、少し意識するだけで気軽に日常生活に取り入れることができます。具体例を挙げると以下のような行動です。

 ◇フェアトレード商品を選ぶ
 ◇地産地消を行う
 ◇再生可能エネルギーを利用する

〇事業者として

 事業者も「エシカル消費」に取り組むことで、以下のような効果が期待できます。

 ◇供給工程(サプライチェーン)の透明性向上
 ◇差別化による新たな競争力の創出
 ◇利害関係者からの信頼感、イメージの向上

〇「エシカル消費」の認証ラベルとマーク

 「エシカル消費」の目安として、持続可能な原料の生産や製造、流通を表す認証ラベルや商品マークがありますので、以下に例示します。皆さんはいくつご存知でしょうか。
消費者として、あるいは事業者としてこれらを活用することで、未来がより良いものへ変わっていくことでしょう。

【国際フェアトレード認証ラベル】
 その原料が生産されてから、輸出入、加工、製造工程を経て「国際フェアトレード認証製品」として完成品となるまでの各工程で、国際フェアトレードラベル機構(Fairtrade International)が定めた国際フェアトレード基準が守られていることを証明するラベルです。以下をはじめとしていくつかの種類があります。

【有機JASマーク】
 農薬や化学肥料などの化学物質に頼らないことを基本として自然界の力で生産された食品を表しており、農産物、加工食品、飼料、畜産物及び藻類に付けられています。

【海のエコラベル】
 水産資源や環境に配慮しているとして、第三者の審査機関による審査によって認証された持続可能な漁業で獲られたものを表すラベルです。

【責任ある森林管理のマーク】

 森林の生物多様性を守り、地域社会や先住民族、労働者の権利を守りながら適切に生産された製品を消費者に届けるためのマークです。 私たち日本人の消費は世界の森林と密接に関わっており、FSCマークの製品を選ぶというアクションをより多くの人に知ってもらうことが森林保全につながります。

【ふるさと(地域特産品)認証食品】
 地元産の原材料を使用している加工食品や、地元の伝統的手法など生産方式に特徴があると各都道府県が認証した食品に貼付されるラベルです。

【RSPO認証】
 パーム油生産による熱帯林破壊や地域住民、農園労働者への人権問題を発端に策定された認証基準です。持続可能な方法で生産されたパーム油を使用する製品に貼付されるマークです。

【GOTS認証】
 原料の収穫から環境にやさしく社会的に責任のある製品を経て、消費者に信頼できる保証を与えるラベリングに至るまで、「繊維製品が正しくオーガニックである」ことを認証するラベルです。