価格交渉する際の「7つのポイント」

城西支部 大村 貴志

 最近のニュースは、何でも値上げ、値上げ、値上げばかりですね。我々一般庶民はもちろんですが、事業者の方々も大変な苦労をされています。
 こういったなか、中小企業庁では、主に中小事業者が労務費、原材料費、エネルギーコスト等の上昇分について、発注元に価格転嫁しやすい環境を整備するための取組として、3月と9月を「価格交渉促進月間」と定めています。「適正取引支援サイト」を作成し、該当期間には、価格交渉や下請代金法に関する講習会、セミナー等を実施しています。また、該当期間終了後には、受注側企業に対して、下請Gメンによる重点的なヒアリングやアンケート調査も実施しています。

出典:中小企業庁HP
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/2021/210830torihiki.htm

 
 しかしながら、実際に発注元と価格交渉を経験したことがある事業者は少ないのではないでしょうか。
 ここでは、価格交渉する際の「7つのポイント」について、お話ししたいと思います。

1.交渉するのは「価格」だけではない。
 「価格交渉促進月間」とされていますが、交渉すべきは「価格」だけではありません。例えば、取引数量や納期、製品仕様、支払い条件等、QCDの切り口を中心に、各事業者にとって異なるであろう必要な項目・内容について、いろいろと抽出・検討してみましょう。

2.交渉とは、ケンカすることではない。
 交渉と聞くと、ニュースでよく見る「労使交渉」をイメージする方も多いのではないでしょうか。テーブルを挟んでにらみ合っているような…。しかしながら、実際には、事業者と発注元の双方にとってWin-Winな状態を目指し、どちらも「負けていない(と感じる)」合意を目指すこと、となります。

3.やっぱり事前準備が大切。
 何事も事前準備がとても大切です。例えば、発注元の企業規模や事業内容、交渉相手の立場や考え方等、考慮すべき点が必ずあるはずです。必要な情報を事前に収集し、社内において整理・分析を行いましょう。

4.交渉のカードを用意する。
 交渉を行うにあたり、項目を記載したカードを用意します。例えば、「価格」「数量」「納期」「製品仕様」「納品条件」「支払い条件」「アフターサービス」といった重要視する項目について、社内でよく話し合い、漏れなくダブりなく抽出して検討します。最終的には、出来れば7~10枚位のカードを用意しましょう。

5.カードに優先(譲歩)順位をつける。
 用意したカードについて順位付けを行います。「優先すべきカード」と「譲歩してもよいカード」に分け、交渉の際には、その順位に基づいて行います。例えば、「優先順位:①価格、②数量、③納期、④製品仕様、譲歩順位:①納品条件、②支払い条件、③アフターサービス」といった感じになります。

6.重視するのは、成果? 関係性? その他?
 今回の交渉では、どのような状態・状況になることを重視しますか?例えば、交渉先となる発注元が最重要取引先の場合、価格を引き上げることでしょうか?それとも、継続的な取引関係を維持していくことでしょうか?もしくは、両者のバランスをとりますか?これも事前に決めておきましょう。

7.3つの目標を設定する。
 ここまでの準備が整ったら、「3つの目標」を設定しましょう。まずは「ベスト目標」です。交渉が事業者側の思い通りに進んだ場合に得られるであろう成果になります。次に「基準目標」です。このラインは必ず押さえておきたいと思える目標です。最後に「最低目標」です。得られる成果の見込みが、これを下回るような状況であるならば、交渉の中止や方向転換を検討・実施することになります。

 値上げのニュースを多く目にするこのタイミングこそ、交渉するタイミングとも言えます。恐れることなく、まずは発注元とアポイントを取ることから、その一歩を踏み出してみましょう。

以 上