大学での創業・起業の教育について

城西支部 中川 浩一

1.起業・創業に関する世の中の流れ

 6月7日に閣議決定された「骨太の方針」に「スタートアップ(新規創業)への投資 5年10倍増」が盛り込まれました。「スタートアップ(新規創業)への投資」は新しい資本主義の重点投資分野の一つで、本年度末までに「スタートアップ育成5カ年計画」を策定するとのことです。
 背景には、日本では「新規開業の担い手になろう」「自ら新事業を創造しよう」という意欲は低い状況が続き、「起業家になる」「起業家を目指す」という選択は、未だ多数派ではないことがあると思われます。

 

2.高千穂大学と杉並中小企業診断士会の起業・創業教育への取り組み

 杉並区西永福にある高千穂大学 経営学部 起業・事業承継コースでは、スタートアップ(起業、社内起業、事業承継)のための講座・科目を揃えています。 多くは同学部内・コース内学生の履修に限られており、入学後スタートアップに興味を持った学生からのニーズに対応できませんでした。今回、他学部生も受講できる科目として「高千穂起業塾 起業で夢をかなえる」を開講することになりました。
 杉並中小企業診断士会は、高千穂大学から「高千穂起業塾」の企画と講師派遣の協力の要請を受け、下表のカリキュラムを企画し、会員の診断士から講師を派遣しました。筆者はアカウンティング&ファイナンスを担当しました。

 

3.スタートアップとスモールビジネス

 「骨太の方針」「高千穂起業塾」では「スタートアップ」という単語で起業・創業を表現していますが、起業・創業は、「スタートアップ」と「スモールビジネス」の2種類あると考えています。
 「スタートアップ」は比較的新しいビジネスで短期的に急成長し、大きな成長とその継続をねらう起業・創業です。これにはイノベーションや新しいビジネスモデルが必要になります。例えば、「ロハスな社会を実現するため、DXを活用したエシカルな事業を展開する」といった事業計画をTED流のプレゼンでエンゼル投資家に訴えるイメージです。

 

 一方、「スモールビジネス」は既存のビジネスモデルで、着実な成長と着実な利益を目指すもので、時間をかけて着実な成長を見込めるビジネスへ育成していくことを目指します。スタートアップと比べると、すでに市場が存在する分野で新事業を起こすことが大きな違いになります。中小企業診断士として指導できるのは「スモールビジネス」が多いと思います。

 

4.大学での創業・起業の教育を終えて

 自分の経験を振り返ると、卒業後の進路についての教育は、進学か就職の2つしか想定されておらす、第3の進路である起業を学ぶ機会は無かったと思う。人生のもっと早い段階で起業について学んでいれば、違った人生を歩んでいたかもしれない。
 高千穂大学の起業・事業承継コースに限らず、今の大学では創業・起業を学ぶ機会を作っているようです。創業・起業について、若いうちに学ぶことができるのは、人生の選択肢を増やすことになり、素晴らしく、また羨ましく感じています。

以 上