タイ訪問よもやま話し

国際部 山本 倫寛

 

昨年、約10年振りにタイを訪問してきました。

8月31日の深夜1時00分・羽田を出発、9月4日の早朝に日本到着という2泊5日の弾丸ツアーでした。

これまでタイには業務出張で十数回訪問経験がありますが、業務以外での訪問は初めてで、非常に新鮮なものを感じました。

日程概要は下記通りです。

9月1日 : 早朝にバンコク到着、午前中・ワットポーなどの有名なお寺を含め観光

       午後はタイ式マッサージを体験後、ムエタイを「かぶりつき席」で観戦

       夕食はブーパッポンカレー(ソフトシェルクラブ・カレー)を堪能
                         

(ブーパッポンカレーに満面の笑み)

 

9月2日 : メークロン線路沿い市場(タラード・ロムフッブ)及び

アムパワー水上マーケット訪問

(アムパワー水上マーケット)

 9月3日 : ジェトロ・タイでのタイの最新状況ブリーフィング

        タイ最大のコングロマリットであるチャルーン・ポーカパン(CPグループ)とのランチョンミーティング

        ヘマラート・イースタン・シーボード工業団地訪問

 9月4日 : 早朝・成田空港到着

 

以上の中で特に印象に残ったことを「よもやま話し」としてつづっていきます。

 まず驚いたのは、公共交通機関が整備され、移動が非常に便利・快適になっていたこと

でした。10年前のバンコクにおいては、とにかく車の渋滞がひどく、特に雨の日は最悪で、1時間かけてやっとほんの数メートル前進というのもざらでした。新たに登場した公共交通機関としては地下鉄及び高架鉄道があり、今回のバンコクにおける移動では頻繁に利用しましたが、どちらも綺麗で混み具合もさほどではなく快適でした。到着時間が読めるので本当に楽になったとの印象を受けました。

 一方で9月2日のメークロン線路沿い市場及びアムパワー水上マーケットは、バンコクから車で約1時間半かかる場所に位置しており、訪問に際しては、ロトゥーと呼ばれるミニバス(15人乗りのワゴン車)及びトラックバス(トラックの荷台を乗車席に改造した車)を駆使しました。これはこれで風情のあるもので、乗り合わせた現地の人たちとの交流をはかることができました。そして強く感じたのが、出会った人たちみんなが親切で優しく、微笑をもってのもてなしでした。今回のタイ視察の目的のひとつが、「なぜ日本人・日本企業はタイに向かったのか・向かうのか」という疑問に対しての答えを探ることでしたが、このようなタイの人々の国民性から醸し出される「居心地の良さ」も答えのひとつなのかも知れません。

ご存知の通りタイとはからの朱印船貿易(1592年~)での交流、山田長政の時代には既に日本人町ができあがっていましたし、タイへの日本人進出は非常に長い歴史があります。昨年は正式な外交樹立から125周年を迎えています。そして昨年のタイ大洪水の報道の際に、予想以上に多くの日本企業が進出していたことに驚かれた方々も少なからずいたのではないでしょうか。現在においてのタイ進出日系企業は約7,000社であり、バンコク日本人商工会議所会員数は20123月時点で1,371社です。なぜ、これだけ多くの日系企業がタイに進出しているのか、ビジネスの観点からの答えとしては下記が考えられます。

・整備されたインフラ

・産業集積

・充実したサプライチェーン

・外資優遇政策・通商政策

・日本人にとっての良好な住環境(治安の良さ、日本人コミュニティー・日本人学校・高度な医療機関等の存在)

 

それにしてもバンコクにおける日本料理店の多さには驚きました。牛丼店「すき家」は勿論のこと、名古屋市発祥の鉄板焼き店「花ちゃ花ちゃ」やラーメンチェーンも多く進出していますが、最大手は金沢市の「ハチバン」が展開する「8番ラーメン」。ひょっとすると東京よりも日本各地の有名店の味を堪能することが出来るのではなかろうかとの印象を受けました。また、札幌市のツルハホールディングスが展開するドラッグストア「ツルハドラッグ」や日本の雑貨・服飾品店も多々進出しています。これら日本料理店や小売店は日本人のみならずタイ人客でも賑わっており、日本料理や日本商品が大流行しているのを目のあたりにした感がありました。いや、ひょっとすると既に根付いているのかも知れません。今後もタイにおけるサービス業進出は期待できるのではなかろうかとの実感を得ました。

一方で製造業ですが、今回は「ヘマラート・イースタン・シーボード工業団地」(ヘマラートE.S.I.E.を訪問いたしました。この工業団地はバンコクから南東に約112km、タイ最大の国際港・レムチャバン深海港から約27kmの距離に立地する工業団地で、このヘマラートE.S.I.E.一帯は「東洋のデトロイト」とも言われており、東南アジアにおける自動車関連・産業クラスターの雄と言っても過言ではありません。総敷地面積約815万坪(約2,690ヘクタール)でなんと東京ドーム約600個分に相当します。入居企業数は317社で、その内150社が自動車関連産業、日系企業比率は約60%です。スズキ、フォード、GMATT社(マツダとフォードの合弁会社)などのそうそうたる世界的自動車メーカーに加え、世界上位25社の自動車部品メーカーの内、15社が進出しています。そして、この工業団地においては、中小企業向けの賃貸工場も用意しているとのことで、広さは最小で500㎡、賃料は平均で1ヶ月200タイバーツ/㎡とのことです。また、オフィスセンターでは、日系企業同士の連絡会を毎月開催しており、新規商談に結び付ける場の提供という、系列にしばりのない海外においてならではのサービスと言えます。

昨年の大洪水災害から復興したタイ。被災した日系企業もほとんどが撤退せず操業を再開したとのことです。それだけタイには魅力があるという証だと思います。日泰両国が初めて交易を開始した時点から数えると2019年に600年の節目の年を迎えます。China+1がクローズアップされ、アセアンでの展開がより重要性を増してきている現在、インドシナ半島の亜細亜東西経済回廊、第2東西回廊(南部回廊)を経由して、脚光を浴びているミャンマーを含めたアセアン各国、更には海を隔てたインドをも視野に入れた拠点となり得ると考えます。今後のタイ及び進出日系企業の更なる発展を祈念すると共に、自分自身としても何らかの関わりを持ってゆきたいとの思いを強くした次第です。

戻る