一般社団法人 城西コンサルタントグループ(JCG)の神谷会長
                              聞き手・文:津田美奈江(地域支援部)

 

 とうとうトップインタビューも今回で最後となりました。今回は、実践的な収益事業集団である、一般社団法人JCG(城西コンサルタントグループ)の神谷会長にお話を伺いました。


1、JCGの設立経緯
2、会長のやりがい
3、目指すべき姿
4、神谷会長の経歴

津田:年末のお忙しい時期にすみません。でもお正月は、少しはゆっくりされるんですか?
神谷会長:いや、本の原稿を仕上げなくてはならないので。
津田:本を?
神谷会長:そう、今本を書いているので。いや、これはJCGの仕事としてではないですよ。
津田:何の本ですか?
神谷会長:サプライチェーンの本です。サプライチェーンマネージメントを基本から学びたい人向けの本です。しかし実践的な内容なので経営者から事務担当者まで読んでいただきたいと思っています。
津田:それは富士フイルム(神谷会長の前勤務先)での工場勤務経験を活かしたものなのですか?
神谷会長:う~ん、それもあるけど、富士フイルムでの勤務経験は3割程度ですね、殆どが診断士になってから培われた経験によるものです。

1、JCGの設立経緯
津田:JCGの設立目的っていうのは?
神谷会長:設立の目的は二つあって、一つは他の支部と同様、外部から仕事を受けるための組織を作ること、他の支部もそういう動きがあって、城西支部は一番遅かったんです。もう一つは、西武信金さんの仕事を受けるための組織作りです。当時も西武信金さんから仕事を受けていたので、それをしっかりと受けとめる組織が必要でした。
津田:そうなんですか。神谷会長が創立されたのかと思っていました。
神谷会長:僕は4代目です。初代は岡田会長、次が野村会長、3代目が小田会長ですね、就任して4年目です。
津田:誰が会長になるかということは、皆で話し合って決めるのですか?
神谷会長:そう、理事会でね。今は、月1回、運営部員で戦略会議をやります。そこで、どんな仕事をやるかを決めます。また、理事会は年に4回、春と秋には、「成績報告会」があって、成果を公表します。総会が年1回、あと、一般会員には毎月「JCG通信」と言うのをメールで送り、仕事の公募や、情報共有を図ります。
津田:設立して何年くらいになるのですか?
神谷会長:2009年に任意団体として設立して、丁度10年ですね。2011年に一般社団法人として法人化しました。
津田:今、会員数はどのくらいなのですか?
神谷会長:130人くらいです。
津田:新しい方も結構いらっしゃいますか?
神谷会長:ええ、毎年10人くらい入るかな、でも10人くらい辞めるので、人数はそう変わらないですね。

2、会長のやりがい
津田:会長職に就かれて、色々プレッシャーなど大変かと思いますが、メリットなど、ございますか?
神谷会長:メリット?何もないんじゃないですか、いやー、大変ですよ。この会長は。だいたいこの仕事はボランティアですからね、代わってほしいです。(笑)
津田:(笑)でも、やはり会長になると周りの見る目が違うと、皆さんおっしゃいますが・・・。
神谷会長:うーん、見る目が違うというか、仕事を取る時に、会長が来たということは相手にとって悪くないですから、仕事を取る上では、役に立つと思いますけどね。でも初めての所に営業に行ってそれが活かせるほど、JCG自体の知名度はまだ高くないですからね。JCGの会長、と聞いて、「あのJCGの会長が来てくれたのか!」なんて言う会社はまずないから。(苦笑)まずはあなた誰?っていうところから入っていくから。
津田:”JCGとは何か“ということを簡潔に説明するのって難しいですね。一言では言えないので。
神谷会長:そう、JCGとは何かから説明しなくてはならないから。JCGのことを知っている相手に対しては、トップが来たということはそれなりに意味を持つかもしれませんが、初めての相手は大体、JCGと言っても何それと言う感じでしょう。
会長と言っても、僕が取った仕事で、僕がその仕事をやってお金をもらうことはありますけど、会長職にお金が出るわけじゃないですから。
津田:それは、支部長とか各診断士会の会長・理事長などもそうですよね。私は最初、こんな大変な仕事が無給と聞いて驚きました。
神谷会長:だから喜んでやる人もいないですよ。ただ、別の言い方をすると、お金をもらってないから、楽な面はありますよね。お金貰ってやってるわけじゃないんだから、文句言っても俺は知らんと。(笑)
津田:「メリットは何か?」という私の質問の仕方が悪かったのですが、この職務上でやりがいを感じる時がありましたら教えて頂けないでしょうか?
神谷会長:一番のいい点は実に色々な人と会えるという事です。基本的に私の考える中小企業診断士の仕事は中小企業の経営支援をすることですからJCGの本業は経営支援です。
売上は研修セミナーと市場調査などの業務もありますが・・・。そして会員のJCGに対するニーズも診断士らしい仕事を行いたいということははっきりしていますので、そういう仕事を取ってくるのが私の仕事です。そうやって努力してきた結果、さいわいいくつもの社長とお知り合いになれたし診断士仲間の人脈もひろがり、金融機関・自治体・公的機関などの多くの人と一緒に仕事をできて新しいノウハウもたまってきました。こういう点で自分自身の成長を感じますのでよかったと思います。これは会員の皆さんがいなかったらとてもここまでの活動できなかったので会長であったからこそ、ここまできたのだと思っています。
津田:今の顧客先と言うのは主に金融機関が多いのでしょうか?
神谷会長:私が直接支援しているのは80%が企業さんです。企業に出向いて専門家として経営支援をしています。その企業を紹介してくれるのは70%が金融機関です。もちろん金融機関を最優先ターゲットとしてますが、残り30%の内訳は公的機関、LEC、診断士仲間、その他友人、JCGに直接接触などです。僕自身の仕事は経営支援が80%。ものづくり補助金の期間はもの補助支援で忙しい。それ以外は専門家派遣として企業支援。事業戦略作成が多い。JCGの仕事としては研修セミナーを提案して実施までする仕事で、メンバーを選んで講師をお願いするのが一番多いです。セミナーや調査を依頼してくるのは、公的機関、LEC、たまに企業。実施するセミナーの内容は色々ありますが、ITからみと補助金からみが人気あるように思います。何を頼まれても断りません!まずは食いつく。
創業塾、事業承継塾、経営者塾などは自主企画で実施します。

3、目指すべき姿
津田:なるほど、これからJCGをこうしてゆきたい、っていうものがあったら教えてください。
神谷会長:人数面では、今より増やす意味はないんです。と言うのは、今は人よりも仕事の方が少ないですから。その状態でまた新しい人を入れても、同じことですから。だから、積極的な宣伝・勧誘はしていません。
津田:目標とか、目指しているものはありますか?
神谷会長:金融機関と仲良くすることで、安定的に仕事が取れる状態にしたいですね。
津田:今は”安定的“と言うところまではいかないのですか。
神谷会長:まだまだ、厳しいです。
津田:それは西武信金さん以外でも、ですよね。
神谷会長:もちろん、他の金融機関も含めて彼らのお客さんは様々な課題を抱えている中小企業が多いですから、それらの企業に行って、課題を解決するのが我々中小企業診断士の役割だと思っています。
津田:神谷会長の代で、それまでと変えたことと言うのは、どんなことなのですか?
神谷会長:僕が会長になって一番にやったことと言うのは、LECさんから仕事を取れるようになったということですよ。それまでは城西支部が月10万で中野の事務所を借りていて、誰も挨拶に行かないから一時期追い出されそうになったんです。城西支部が事務所を借りていたんだけど、LECに対して目立った貢献ができていなかった。LECの社長さんは城西支部の動きを知らない「どうしてあの事務所を貸してるんだ?」ということになって。
津田:そこで神谷会長がご挨拶に行って仕事をとってきた?
神谷会長:僕が取ってきたと言ったら言い過ぎだけど、僕が言い出したんですよ、折角中野の事務所を借りているのに、どうして誰も挨拶に行かないのって。今はもう、LECさんで城西支部と言えば「ああ、あの城西支部さんね」って言われますけど。


神谷会長:ここ3年間くらいは、売上が3,000万位になりましたが、その前は1,000万~1,500万位しかありませんでした。特に設立して5年間くらいは大変でしたね。仕事は、取ったらすぐにJCG通信で公募するようにしています。今は月3回くらい流しています。
津田:月3回も!
神谷会長:設立して5年間くらい、売上が1000万もいってなかった頃は、会員から何やってるんだという文句が来たと聞いています。それはそうでしょう、このままじゃいけないと思いましたね。
僕は売り上げ目標を会員に宣言してるんです。その期の売上目標と、その結果を総会で発表して、会員の皆さんに協力を仰いでいます。会員のニーズはわかっているし、結果を出してきたから会員も協力してくれる。
津田:大変なお仕事ですよね、それもボランティアで・・・。
神谷会長:それでなかったら僕が何か言っても誰もやりませんよ。
津田:まあ、JCGに入ってくる人は皆、収益事業をしたいから入会するのですものね。
神谷会長:それで求める情報がなかったら辞めていく。僕は言ってるんですけどね。仕事が来るのを待っているだけじゃなくて、一緒に仕事をやろうよと。
津田:一緒に仕事を取りに行く人が欲しい、ということですか?
神谷会長:はい。一緒に仕事を取りに行って一緒に仕事をする人。そういう人に来てもらいたいです。待っているだけの人はいらない。診断士でそれなりの仕事を取るにはやはり集団でないと取れないですよ。単独で仕事を取れる人はJCGに入らなくてもいいし、そういう人に来てもらいたいとは思わない。
津田:それは診断士でなくても仕事を取れる人ですよね。
神谷会長:そうそう、でもやはり顧客側からみると個人より集団の方が安心感があるし、診断士らしい仕事は集団でないと取れないですよ。だから僕は集団で仕事を取れるところに営業に行ってる。集団で、色々な能力やスキルを持った人がいるから、仕事を取れていると思っています。それは金融機関さんでも、LECさんでも同じです。この130人のパワーがあるから、LECさんでも仕事をくれるんです。また、僕はいざJCGのメンバーだけでは足りないことがあったら、城西支部の600人がいると思っているから安心して営業できるんです。
津田:でも、JCGにも余力があるって・・・?
神谷会長:そりゃ、仕事の情報はさっきも言ったように年に何回も流していますが、まだニーズと会員の持つスキルが合致していない場合は多いし、会員の中には自分の仕事で手一杯という人もいます。僕は一緒に仕事がしたいので、そういう人に来てもらいたいんです。来てくださいという募集はしないけど、JCGに興味をもって、話を聞きたいと言うならいつでも来てください。いつでも、僕は話します。
津田:なるほど、よくわかりました。自分から仕事をする人ですね。

4、神谷会長の経歴
津田:前職の富士フイルムは、定年退職されたんですか?
神谷会長:1年だけ、早期退職しました。
津田:それは、診断士として収入が見込めるようになったからでしょうか?
神谷会長:いや、全然、それはないです。僕は診断士に魅力があるからとか、収益が見込める見通しが立ったからとか、そんなカッコイイものじゃなくて、単に富士フイルムでもう仕事がなくなったと言われたから辞めたんです。ただ、これは本当に偶然ですが、辞めたとき、
ものづくり補助金の事務局の仕事が来たんです。忘れもしません、当時の野村支部長に、辞めたんだったらお前やらないか、と言われたんです。
津田:ものづくり補助金の事務局で、何をする仕事なのですか?
神谷会長:ものづくり補助金の手続きを、企業と一緒にやってあげる、つまり申請した企業にお金が廻るまで、サポートする仕事です。申請して採択された企業が、そのあと報告書を出して色々手続きをするでしょう。中小企業団体中央会の銀座の事務局に、週に3回くらい、4年間通いました。それがあったから会社を辞めたんではなく、辞めてからその話が来たんです。
津田:野村支部長から。それは野村支部長の信頼が厚かったんですね。
神谷会長:そうでもないと思いますよ、他にやる人がいなかったからでしょう。
津田:(笑)えっ、でも、そういう仕事はやりたい人がいっぱいいるじゃないですか。
神谷会長:今はね。当時は何やるのかわからなかったから。これは2013年に、ものづくり補助金ができた時だったので、我々も事務局に行ってみて、集められて何やらされるのかわかりませんでした。
津田:そうなんですか、でもああいう仕事って、勉強になりますよね。
神谷会長:大いになりました。だって実際、そのおかげで200社くらいの社長と会えたのですから。
津田:200社!もの補助が採択されてから補助金をもらうまでのサポートで…。
神谷会長:だから、社長は会ってくれますよね。お金をもらうためなんだから。
津田:もの補助は金額が大きいですしね。
神谷会長:そう、普通に診断士が行っても会ってくれないですけどね。忙しいからって言われるのが関の山ですけど、これは補助金貰うためだから、必ず会ってくれます。これで度胸もつきました。
津田:度胸?どういう度胸ですか?
神谷会長:社長と話す度胸です。彼らがどういうことを考え、悩み、どういったことをすれば喜ぶかということが、200人の社長と話しているとわかってきます。
津田:なるほど、そうですよね。
神谷会長:だから、区の経営相談員の仕事が人気あるのも、それなんですよ。社長が悩みを抱えてやってくる、その話を聞けば、企業の抱える悩みが直接伝わってくる。それに応えて役に立つアドバイスができると、やりがいもある。それと同じことを、僕はものづくり補助金の事務局の仕事を通じてできたんです。だから、最初に言った本を僕が書けるのも、30%くらいは富士フイルムでの経験もあるけど、あとの70%は退職後の経験からなんです。その中でもものづくり補助金の仕事のウェイトはかなり大きいです。
津田:勉強になったんですね。
神谷会長:そう、それも2013年にものづくり補助金が国の制度としてスタートした、その時から僕はやっているから、この制度の仕組みの意味も、よくわかったんです。どうしてこれをやらなくてはならないか、何のためにこの仕組みがあるのか、この制度がまだ形になってない段階から参加して、この制度の歴史を見てきているからそれが分かったうえで話ができるんです。今やっている人は、そこまでわからないでしょう、どうしてこのような仕組みになっているのかまで。すでに出来上がった制度をおぼえようということですからね。そこの違いはありますね。
津田:例えば創業間もない企業などは、決算書がないじゃないですか。そうすると、審査する側としては財務面の項目は、どうしても点のつけようがないんですよね。財務面で、補助金が出るまでの資金調達を問われるじゃないですか。決算書がなくても申請はできるのだけど、補助金が出るまでの資金は、金融機関に融資を確約してもらうって創業間もないと難しいと思うんですよね、だからそこは書いてなかったりして。
神谷会長:それは、決算書がなくても申請できると公募要領に書いてあるんだからなくても一向に気にすることはないですよ。だけど、資金面での金融機関の融資は、なければだめですよね、金融機関との信頼関係は持っておいてくださいというのが中小企業庁の意図なんだから。そのために認定支援機関と言う制度があるんです。そういうことを、診断士が教えてあげないと。
津田:もの補助の申請書は、今はほんとに、プロが書いたとしか思えないような立派なものばかりですけれども、その頃は社長自ら書いたものが多かったんでしょうね。
神谷会長:そう、その頃はね。今は申請支援者(プロのような)が書いているじゃないですか。僕は今でも、ある団体の申請書の書き方指導をしているんです。一見とてもよく書けていますが本当にわかって書いているのは2割くらいですね。
津田:でも、審査する方もそんなに1件ごとの審査に時間をかけないじゃないですか。だから、本当にわかって書いているのか、そこまで見るのかなと思いますね。
神谷会長:そう、それは制度だからすべてが完全ではないので仕方ないですよね。
津田:それにしても会長は、前職では工場勤務がメインでいらしたのに、この業界では営業でもご活躍なんですね。
神谷会長:僕はLECさんでも金融機関でも、アポなしで行きましたよ。
津田:えっ、そうなんですか。
神谷会長:最初は「あんた誰?」って感じか、会ってくれないですけどね。それでも行ってみると違いますね。
津田:そうですよね、足を運ぶことによって、その時直接収穫はなくても、思わぬところから情報が得られたりしますよね。でも、それまで工場で生産の世界が長かったのに、いきなり営業することに抵抗はなかったのですか?
神谷会長:それは、色々ありましたけど、話すと長くなりますからまたの機会に・・・。
津田:それは残念、またの機会に是非お伺いしたいですね。本日は年末のお忙しい中、お時間いただきまして本当にありがとうございました。

【編集後記】
 以前に神谷会長から、前の会社では工場勤務だったとお伺いし、いかにも工場長のような雰囲気がある方だと思っていましたが、営業もばりばりなさる方なんですね。しかもいきなりアポなしで営業に行けるとは、正直、大企業で生産畑にいらしてそういうことができる方は珍しく、一気に親近感が湧いてしまいました!私の推論ですが、一見本音をぽんぽんお話になる、豪放磊落にも見えますが、挫折をばねに人一倍努力してきた、人間味溢れた方なのではないでしょうか。これからもJCGに期待したいです!